2017年のリスク管理の展望:ポピュリズムとイノベーションの波を乗り切る
Key research questions
- What expectations lie ahead for the risk environment in the near term?
- What strategic risk management IT imperatives do firms need to focus on this year?
- What are the important strategies for success to navigate and exploit current market dynamics?
Abstract
イノベーションの波に乗るために次に必要な能力として、リスク管理とコンプライアンスが挙げられます。
KEY RESEARCH QUESTIONS | |
1 | リスク環境の短期的な展望は? |
2 |
戦略的リスク管理システムに不可欠な要件のうち金融機関が今年重視すべきものはどれか? |
3 | 現在の市場の動きを巧く捉え、活かすために必要な戦略とは? |
規制制度の煩雑化と細分化がさらに進み、データ集約型にシフトしつつあるのに伴い、金融機関は既成概念の枠を超えたスケールメリット、業務の一貫性および透明性を達成し、金融サービスのビジネスモデルをできるだけ多く取り込む必要があります。金融業界の改革はリスク、資本およびコンプライアンス要件が中心となり、金融機関はインダストリアリゼイションとイノベーションが混在する新しい世界に対峙しつつ、ポピュリズムやナショナリズムといった昨今のアイデンティティ政治の高まりがもたらす副次的な影響に抵抗しています。現在、リスク管理者にとってマクロ政治的および社会的リスクは考慮すべき重要課題となっています。
リスクおよびコンプライアンス機能は組織全体のコスト削減に直結する訳ではないものの、銀行の戦略的対応と整合性があり、組織全体の効率化およびコスト削減目標に寄与することが求められ、短期的には規制当局からの防波堤として機能し、業務を継続させることに注力しなければなりません。金融機関の間では、リスクおよびコンプライアンス業務の効率性の向上と組織全体の総リスクコストの最適化に重点的に取り組む動きが広がっています。「サプライチェーンの産業化」(リスクデータ、リスクモデル、情報生産と報告プロセス)が進めば、金融機関は最新のイノベーション、テクノロジー、ITパラダイムへの投資やフィンテック企業との提携を通じた大幅な変革を迫られるでしょう。
「RiskTechやRegTechを手掛ける企業がこの分野に本格的に参入している一方、先見性の高い金融機関はイノベーションによる変革を通じて規制およびリスク管理上の課題や継続的なコスト削減圧力に対処しようとしています。」
「しかし今後は、規制当局の保守的なスタンス、日常業務・責務の調整、新たなイノベーションの導入に必要な細かい戦術の間の緊張関係を管理するための現実的なアプローチを迫られるでしょう」と証券プラクティスのリサーチディレクター、キュビラス・ディンは述べています。
本レポートでは、金融機関のリスクおよび規制関連プロジェクトの進捗状況と短中期的にとるべきアプローチについて最新の見解を示します。