マス顧客層向け次世代モバイルバンキング:決済機能のみならず
Abstract
PlaNet Financeとオリバー・ワイマンは、低所得者層向けに単なるモバイル決済機能だけでなく幅広い金融商品を提供するモバイルテクノロジーの実力を検証しました。
今回の調査はビル&メリンダ・ゲイツ財団の支援を受けて実施されたもので、西アフリカおよび東南アジアでの試験運用を通じて、販売戦略と第2世代のモバイル・マイクロファイナンス商品について検証しました。
携帯電話加入者のうち銀行口座を持たない、あるいは銀行から十分なサービスを受けられない人の数は、2012年までに世界で20億人に達すると予想されています。現時点で、携帯電話加入者のうちモバイルマネーサービスを利用している人は5,000万人程度にとどまっています。これらの人が主に利用しているのは、送金、プリペイドカード、請求書の支払い、ローン返済など第1世代のサービスです。これに対し、マイクロセービング、マイクロクレジット、マイクロインシュアランスといった第2世代の金融サービスが広がれば、特にリテールバンキングの普及率が10%に満たない国の場合、モバイルマネーによって変革がもたらされるでしょう。通信会社や金融機関はこうしたサービスへの参入を通じて、補完的技術から専門ノウハウを取得し、顧客により高い価値を提供できるなど、メリットを得ることができるでしょう。
ただ、成功までの道のりは決して簡単ではありません。
PlaNet Financeとオリバー・ワイマンは、2010年に西アフリカと東南アジアで行われた試験運用の経験を踏まえ、モバイル・マイクロファイナンスの導入や戦略・業務面のソリューション提供をめぐる課題について説明します。
今回試験運用されたのは、以下の2つの革新的なビジネスモデルです。
・ マイクロファイナンスを手掛ける既存の銀行を通じて、モバイルマネーを使ったマイクロファイナンスを提供する。
・ モバイルサービスに特化するバーチャル銀行を通じてマイクロファイナンスを提供する。
「今回の調査では、これらのモデルのメリットとして、バンキングサービスへのアクセスが2倍以上増えたこと、マイクロファイナンス機関の業務コストが20~50%減少したこと、モバイルネットワーク運営業者の収益と市場シェアが拡大したことなどが明らかになりました」と、PlaNet Finance Groupの共同創業者でバイスプレジデントのArnaud Venturaは述べています。
レポートでは、次のように結論付けています。
・ モバイル・マイクロファイナンスによって実際の銀行支店が持つデメリットは全て解消されるため、銀行口座を持たない携帯電話加入者向けの金融サービスが大きく変化する可能性があります。このサービスには社会的および経済的なメリットがあります。
・ 銀行やマイクロファイナンス機関にとって、普及率の高い通信業者の販売ネットワークを利用してマス顧客層を取り込む方法はコスト効率が良いといえます。PlaNet Financeとオリバー・ワイマンは、両サイドのパートナーを「相互接続」してスムーズにやり取りできるようにする新しいタイプの仲介機関が出現している点にも注目しています。これらは、スプレッドではなく取引手数料を収入源にしています。
オリバー・ワイマンのパートナーであるグレッグ・ラングは、「PlaNet Financeとオリバー・ワイマンは、長期的にみて、銀行、販売業者および規制当局を含む全てのステークホルダーが連携して適切な提案を策定し、全ての問題に対応できる「ウィン・ウィン」モデルを構築する必要があると確信しています」と述べています。
PlaNet Finance Groupについて
PlaNet Financeは1998年に設立された世界有数のマイクロファイナンスグループで、包摂的金融の促進による貧困撲滅を目指しています。グループは、一般的な金融サービス(預金、借り入れ、保険商品の購入など)を受けられない人を支援し、これらの人々の所得の平準化、収入を生む活動の創出と促進、日常的なリスクからの保護を実現しようとしています。世界80カ国で事業を展開し、マイクロファイナンスの拡大に向け継続的に取り組んでいます。
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