ロボアドバイザー(自動投資アドバイザー)をめぐるディスラプション:ウェルスマネジメントはアドバイザー主導から顧客主導へ【全訳版】
Abstract
(このレポートは2014年12月1日に"Disrupting the Disruptors: RIAs, Online Brokers, and the Challenge to the Automated Investment Advisors" というタイトルで英文で発表されましたが、和訳版を2015年5月21日に発行しました。)
*レポート(日本語)=全訳版PDF、(英語)=原文レポートPDF
デジタル化の波を受けて金融業界の様々な分野で市場の再編が進む一方、ウェルスマネジメント業界は比較的その影響を受けずに来ました。しかし、自動投資(ロボアドアバイザリー)プラットフォームの費用対効果やスケーラビリティが向上し、日常生活においてもデジタル化が進む現在、伝統的なウェルスマネジメントサービスを提供する金融機関もデジタル化への対応を迫られています。
本レポートでは、今日のウェルスマネジメント業界で加速している新たな「ディスラプション」について考察します。手数料収入に依存しがちな、投資アドバイスを提供する伝統的なプロバイダーは、デジタル生まれの新規市場参入者によってその地位を脅かされつつあります。
以前は、この類の進化には十年単位の歳月がかかりましたが、今や数年単位で起こっています。テクノロジーの導入は業界に変化をもたらし、新規市場参入におけるハードルを下げ、投資家は幅広い価格帯やオプションの中から選択できるようになりました。ここで言う投資家にはマス富裕層だけでなく、未開拓のミレニアム世代の投資家も含まれており、彼らの、財産後継者として、また現役世代としての立場、行動特性は、ウェルスマネジメント業界の将来に大きく影響を及ぼしています。
オンラインでの証券取引や資産運用サービスの自動化など、テクノロジー主導の投資方法が一般化するにともない、投資アドバイザーが市場で果たす役割は縮小し、証券会社や投資顧問業者のビジネスモデルに特有の高額な手数料が弱点として表面化してきました。しかし、現在市場に台頭しつつあるロボアドバイザー(自動投資アドバイザー)にも、固定の顧客基盤を持ち市場の低迷期にも耐えうる優位性を備えたVanguardやCharles Schwab等の機関投資家、また元々競合であったオンライン証券との競争が待ち受けています。これに手数料の低価格化等の要因も加わって、ロボアドバイザー(自動投資アドバイザー)も安泰とは言えません。
「価格競争の結果か、株式市場の先行き低迷の結果かどうかはともかく、市場の再編によって『Automated investing 1.0』(自動投資管理の第一世代)の終わりが近づいています。市場を主導するパワーが、アドバイザーから顧客の手に移行することになった『Automated investing 1.0』から、『2.0』へとバージョンアップするときが近づいています」と、セレント証券グループのシニアアナリストでレポートを執筆したウィリアム・トラウトは述べています。