ニューノーマルへの適応
【緊急調査】日本とAPACの金融業界におけるCOVID-19インパクト
セレントは、金融業界における各種の動向調査を定期的に行っています。今回のサーベイでは、COVID-19の2020年IT計画への影響を調査します。
質問項目は5問で、ご回答は3分程で完了します。ご回答内容は全て統計的に集計したうえで、弊社調査レポートへ反映致します。調査結果をレポートに記載する際には、個人や個社を特定可能な情報を一切公開致しません。調査にご協力頂いた方には、後日調査結果の概要レポートを提供致します。
貴社のお取り組みをお聞かせ下さい。
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APACに拡散するロックダウン
3月17日、米国のシンクタンクであるヘリテージ財団は、シンガポールを「世界で最も自由な経済国」と宣言した。それから1週間も経たないうちに、シンガポールは国境を完全に封鎖した。マレーシアとの間を結ぶ道路と鉄道の橋であるJohor–Singapore Causewayは、毎日のように仕事のために渡ってくる40万人の通行を封鎖した。アジアで最も旅客数の多い空港の一つであるChangi Airportは非居住者の通過を禁止され、シンガポール航空は路線の96%の減便を発表した。
経済・金融のハブとしてのシンガポールや香港、グローバルなサプライチェーンの要としての台湾やバングラデシュ、ベトナム、観光地としてのタイといった、APAC主要国の経済と金融における開放性に依存してきたAPACの経済は、急速かつ包括的な国境の封鎖と孤立を余儀なくされている。今、私たちが目にしている光景は、世界経済がほぼ完全にロックダウン(封鎖)されているということだろう。ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離)の要請は、すでに人々の移動を制約ばかりでなく、企業活動におけるサプライチェーンの再考を促している。
ここ数年ASEAN諸国、特にベトナムは、米国が中国との「貿易戦争」の一環として課した関税を回避するために中国からシフトした製造業者を誘致してきた。それ以前にも、製造業者はASEAN諸国間の低率関税を利用して、人件費や政府支援のアービトラージを享受してきた。ベトナムやインドで組み立てられた部品は、それぞれの段階で付加価値をつけながら、何度も国境を越えて移動し完成品となった。COVID-19パンデミックはこのシステムを「崩壊」させる可能性がある。
後戻りは出来ない「ニューノーマル」
こうしたAPACの開放性に依存してきた経済活動にとって、今回の危機は一体何を意味するのか?そしてこのパンデミック状態を最終的にコントロールできた暁には、APACとグローバルなランドスケープはどのように見えるのか?
出張とミーティング、カンファレンスが完全に停止したこの数週間、APACの企業活動はこれまで未体験な空間を彷徨っている。頻繁に出張し、カンファレンスやラウンドテーブルでAPAC各地のソートリーダーと「面談」し、「会食」し、意見交換してきた小職にとっても、2020年上半期のそうしたスケジュールは全てキャンセルされ、Outlookカレンダーは電話会議とWebinar、デジタル・カンファレンスの予定ばかりとなった。セレントのI&IDayもいち早くDigital I&I Dayにシフトし、既に多くの参加登録を頂戴している。(ご登録はこちらから)
これはSF映画のシーンではなく、まもなく「ニューノーマル」となるかもしれない。そして開放性に依存してきたAPAC経済は、もはや後戻りできない新常態を直視することになろう。
国境を越えた人々の移動である国際移住は、移住元の国と移住先の国の両方で、経済的な成長と貧困の削減に多大な影響を与えてきた。世界銀行のデータによると、2013年には2億4,700万人以上の人々が出生国以外の国で生活しており、7億5,000万人以上が自国内で移住して暮らしている。その後数十年の間に、人口動態、グローバリゼーション、気候変動により、国境を越えてもしくは国境を越えずとも地理的な広がりを前提に、移民の圧力が高まることが予想されていた。APAC経済は正にその影響を最大に享受しており、今回の移動制約(もしくはデジタルな移動?)が招く異次元の環境への適応が必要だ。
軒並み減速するAPACマクロ経済指標
アジアの新興国経済はCOVID-19の大流行による世界経済の停止を受け「2020年は過去22年間で最もその成長ペースを落とす」、とアジア開発銀行(ADB)は4月3日(金曜日)の報告書で発表した。
ADB はまた、金融危機の可能性を警告し、COVID-19パンデミックは2020 年に世界のGDPを2.0 兆ドルから4.1 兆ドル、または2.3%から4.8% 押し下げると推定した。APACの発展途上国経済圏は、2020年の成長率を2.2%に低下させ、前回のアジア金融危機が勃発した翌年の1998年の1.7%以来、最も鈍化すると推測している。
APAC地域全体での成長率は昨年、米中貿易戦争の中で5.2%に鈍化したが、COVID-19がコントロールされ早期に経済活動が再開されると仮定すれば、2021年は6.2%に回復する可能性があるとしている。
中国は今年の成長率は2.3%に低下、来年には平年並みの7.3%を超える水準に回復し、その後は平年並みの成長に戻ると予想している。インドは2020年は4.0%に減速、2021年度には6.2%まで上昇すると予想している。
発展途上にあるAPACのすべての地域経済では、世界的な需要の低迷、国内でのロックダウン政策により、成長の減速を予想している。ASEANの経済的に開放的な地域や、観光に依存している太平洋地域における大きな打撃も予想している。太平洋地域の経済活動は、2020年には0.3%縮小し、2021年には2.7%まで回復すると予想している。
日本の金融業界へのインパクトはこれから
日銀短観にみる、金融機関のソフトウェア・研究開発を含む設備投資額(除く土地投資額) 計画値の推移(前年度比%)は、以下の通りである。
2016年以降、銀行業以外は不安定な計画値の推移を示している。
2020年3月の計画値は、前年度同期比の単純比較で、銀行▲2.0%、金融商品取引業+4.0%、保険業▲0.5%、貸金業等▲19.6%と、既に減速傾向を示すが、調査タイミングからCOVID-19のインパクトは反映されていないものと推測される。
日本の金融業界へのインパクトはこれからである。
「生き残る種とは、最も強いものではない。最も知的なものでもない。それは、変化に最もよく適応したものである。」(ダーウィン)
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セレントは、金融業界における各種の動向調査を定期的に行っています。今回のサーベイでは、COVID-19の2020年IT計画への影響を調査します。
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