北米のリテールバンキングチャネルシステム:オムニチャネルの探求は続く
Abstract
リテールバンキングのトレンドはデジタル・エンゲージメントへと向かいつつありますが、業界ではいまだ対面式の顧客エンゲージメントが主流となっています。
消費者の好みは常に変わり、銀行はその劇的な変化に付いていくための対応を迫られています。今回のレポートは、過去に隔年で発行した2つのレポートと同じく、金融機関およびソリューションプロバイダーへの複数回の取材に加え、2014年10月に北米の156に上る銀行および信用組合を対象に行った調査結果をもとに、北米の金融機関が目指すオムニチャネルの方向性を明らかにしています。
最新の調査結果をみる限り、支店の変革に対する関心は引き続き高く、銀行および信用組合はデジタルチャネルで後れを取らないようにすることに最優先で取り組んでいます。また、デジタルチャネルの機能向上と同時にオムニチャネル化も目指しています。預かり資産の規模にかかわらず、多くの銀行がオムニチャネルを最優先課題と位置付けていますが、「オムニチャネル」の意味するところについては見解に大きな違いがあります。調査結果からは以下の点が浮き彫りとなっています。
- 預かり資産が500億円を超える銀行の40%近くは複数の支店システムを運用しており、求められているテクノロジープロジェクトのコストや複雑性が増している。
- 調査対象の金融機関のうち、支店内の口座開設システムを使って手続きを自動化(ペーパーレス化)しているケースは3分の1にすぎず、融資システムを自動化しているケースはさらに少ない。ユニバーサルバンカーといえばタブレット端末を片手に機敏に行動するイメージが一般的だが、金融機関がこれを地で行くのであれば、ビジネスプロセスを再構築する必要がある。
- 調査対象のうち4分の3に当たる金融機関は、取引件数は今後も年間5%を超えるペースで減少するとみており、さらに40%近くは、支店の取扱件数はその倍のペースで減少するとの見方をしている。一方、今後5年間の支店数の変化については、変化がないとみている金融機関は3分の1、純増を見込んでいる金融機関は40%、減少を想定しているところは25%となった。
- オンラインによる顧客エンゲージメントを目指す金融機関が増えているが、その目標に見合う機能を整備できていないのが現状である。オンラインショッピングのクーポン、値引きまたはリワードプログラムなどを提供している金融機関は5分の1に満たない上、テキストやビデオによるチャット機能やオンラインの面会予約機能を備えているケースはさらに少ない。
- モバイル/タブレットチャネルはトランザクションを核に据えている状況は変わっていないが、口座間振替機能を備えているのは全体の3分の2、P2P(個人間)決済に対応しているのは3分の1未満にとどまっている。顧客エンゲージメントに関しては、モバイルを通じて顧客にマーケティングメッセージを発信している金融機関は5分の1にすぎず、基本的なパーソナル・フィナンシャル・マネジメント(PFM)サービスを提供しているケースもごく少数であることがわかった。
結論として、大部分の金融機関はデジタルチャネルが販売チャネルとして機能するには程遠い状況にあり、多くの商品で新規顧客の登録機能さえデジタル化されていないのが現状であることが明らかになりました。
「銀行が全てのチャネルで質の高い、スムーズかつ魅力ある顧客経験を提供しつつサービスコストを抑えるためには、課題が山積しています。それを実践するか否かは選択肢ではありません。多くの銀行はこうした目標にはるかに及ばないところにいるからです」と、セレント銀行プラクティスのシニアアナリストでレポートを執筆した ボブ・メーラは述べています。
レポートではまず、調査対象の金融機関におけるリテールバンキング戦略の最優先課題、チャネルが担う役割の変化、課題の実現をサポートするテクノロジーの重要性を分析し、2014年10月に北米の銀行および信用組合を対象に行った詳しい調査の結果をもとに支店、オンライン、モバイル/タブレットといったチャネルプラットフォームの現在および将来のトレンドについて説明しています。
全66ページからなるレポートには2つの表と105の図が掲載され、デジタルおよび支店チャネルシステムで現在採用されている/今後採用が計画されているテクノロジーについて詳しく説明した付属資料も添付されています。