高頻度取引(HFT)の次の舞台はアジア?
Abstract
(このレポートは2011年9月14日に"High Frequency Trading:Looking to Asia for Succor"というタイトルで英文で発表しましたが、日本語版を2011年11月22日に発行しました。)
高頻度取引(HFT)は転換期を迎えています。欧米では、グローバル現物株式の主要市場でHFTが市場の調和と効率性の向上に寄与してきましたが、将来の成長余地は縮小しました。これらの市場では売買高とボラティリティの低下により、収益機会が減少しています。さらに、HFTの全般的な収益性についても疑問が投げかけられています。
セレントの最新レポート「高頻度取引(HFT)の次の舞台はアジア?」はHFTの収益性について、アジア市場の成長性と関連付けて考察しています。また、グローバル化と取引電子化の拡大がクロスアセット取引の発展に及ぼす影響についても検証しています。
テクノロジーの急速な進化により、トレーダーはグローバル市場でより簡単にマルチアセット取引を執行できるようになっています。グローバル化によって世界的に経済の一体化が進み、それに伴いアジアの主要市場ではHFTへの関心が高まり、HFTを手がけるプレーヤーの市場参入が拡大しています。各市場におけるHFTのシェアでは引き続き欧米勢がリードしていますが、日本、オーストラリア、カナダなど他の市場でもHFTが急拡大していることは明らかです。
「HFTと市場の蜜月期間は終わり、市場参加者はHFT戦略の収益性と影響を長期的かつ厳しい視点で見極めようとしています。一方、これを立て直しの時期と捉えることも可能で、今後はマルチアセット取引のニーズに合ったHFTの普及・拡大が進むと考えられます」と、セレントのシニアアナリストでレポートの共同執筆者であるアンシュマン・ジャスワルは述べています。
「欧米市場でHFTの成長ペースが鈍化した要因には、これらの市場ではHFTの持つ可能性の多くがすでに実現したことが考えられます。今後数年間はアジア市場がHFTの成長の最前線となり、主な市場参加者の多くがそれに備えた体制を整えてくるでしょう」とアナリストで共同執筆者のムラリダール・ダザールは述べています。
レポートでは、主なグローバル市場におけるここ数年のHFTの進化の経緯を明らかにし、HFTの促進要因と市場参加者による様々な戦略を紹介しています。また、HFTの可能性の多くが既に実現されたとみられる欧米市場の最近の変化についても取り上げています。さらに、規制の果たす役割の重要性を市場別に検証し、特にアジア市場に焦点を当てています。最後に、マルチアセット取引の重要なトレンドとHFTとのシナジー効果について分析しています。