EMIRがバイサイドに及ぼす影響:メリット大ならコストも大
Abstract
バイサイドの金融機関のうち90%は、2013年は大幅な規制強化や景気の不透明感から自社の業績に最大の下押し圧力がかかるとの見方をしていると推計されます。今後2年間に欧州市場インフラ規制(EMIR)、ドッド・フランク法、バーゼルⅢなどの施行が予定されており、デリバティブ取引をめぐる経済環境は最も大きな影響を受けるとみられます。
EMIRは最終顧客をシステミック・リスクから守るための規制であり、バイサイドの金融機関は当然ながらこれを支持しています。セレントの最新レポート「EMIRがバイサイドの金融機関に及ぼす影響:メリット大ならコストも大」は、EMIRの施行がバイサイドの金融機関に及ぼす影響に焦点を当てています。
欧州証券市場監督局(ESMA)は2012年12月、欧州の市場参加者がOTCデリバティブ取引における清算機関の利用を義務付けられるのは2014年半ば以降になるとの見解を発表しました。実施時期が当初の予定より約1年半遅れる見通しとなったわけで、構造改革にも明らかな遅れが出るとみられます。
新規制は、何らかのデリバティブ取引(金利、為替、株式、信用および商品デリバティブ)を行った取引主体に対して、以下のことを義務付けています。
- 新規のデリバティブ契約を結んだ場合は、日次ベースで取引レポジトリ(取引情報蓄積機関)に報告する
- 全てのOTCデリバティブの未清算取引について、業務手続きや証拠金算出を含む新たなリスク管理基準を策定する
新規制の導入によって市場インフラの経済性が揺らぎ、流動性の仲介機能が低下する可能性があるなど、多大な影響が及ぶことは明らかです。
「OTC取引における清算機関の利用、担保管理の導入といった基準に完全に対応できるのは、バイサイド金融機関のうち30%程度に限られるでしょう。それでも、EMIRは段階的に施行される予定です」とセレント証券グループのシニアアナリストでレポートを執筆した ジョセフィン・ドゥ・シャズルネは述べています。
レポートではEMIRの規制の枠組み、ドッド・フランク法との類似点、また、EMIRが及ぼす影響とバイサイドが直面する課題について考察しています。
本レポートは26p、5図と5表で構成されています。