債券テクノロジーの未来像:段階的イノベーションの魅力
債券市場におけるテクノロジー機会の価値分析
Abstract
債券のセルサイド企業には多くの有望なテクノロジー投資対象がある。この分野におけるテクノロジー変更は、これまでは規制改革、レガシーシステムの保守、コスト削減にフォーカスしていることが多かった。2020年にセレントがリリースしたレポート「収斂する世界におけるトレーディングの変革」では、フォーカス先がより価値創造へと変化しつつあるとしている。セレントの調査は、比較的低コストの段階的なイノベーションが最大のリスク加重価値を達成し、バリュー重視のテクノロジーポートフォリオの中心となることを示している。
2022年までの約10年間、低金利環境は多額の支出を伴う事業計画にとって理想的であった。低コストで資金を調達することができ、多くのハイテク企業はイノベーションと失敗の自由を獲得した。しかしテクノロジー業界の支出に対するこのやや傲慢なアプローチは、マクロ経済の不確実性の高まりと金利上昇に伴い変化している。特にフィンテックは、資金調達やバリュエーションをコロナ禍前の水準にさえ近づけることが難しくなっており、最近では米シリコンバレーバンク(SVB)からの預金流出によって、悲惨な結果になりかねない状況が浮き彫りになっている。これは極端な例だが、「Nice-to-Have(あると助かる)」プロジェクトが棚上げされる中で、投資を行う際の価値への注目度はこれまで以上に高まっている。
テクノロジー戦略と支出判断の指針となるよう、セレントはその業界経験、新旧の調査、ヘッドトレーダーへのインタビューから得た成果を組み合わせて、最も高い価値をもたらすであろうテクノロジーへの投資機会を特定した (下図1参照)。この分析を実証済みのポートフォリオ理論の分散原則と組み合わせることで、債券市場参加者の個別の状況に適応可能な価値主導型の債券テクノロジーポートフォリオが得られる。