コロナ禍、デジタル化と世界経済が損害保険分野のBPOに及ぼす影響
2021年 世界の損害保険向けBPO市場の分析
Abstract
新型コロナウイルスのパンデミックは、損害保険会社にとりわけ大きな打撃をもたらした。自然災害や悪天候による被害が多発する年はただでさえ経営悪化に陥るが、今回は保険証券の失効や事業中断に伴う保険金請求への対応も迫られた。保険会社が劇的に変化した事業運営を維持するため腐心するなか、顧客側は途切れないサービスの提供を期待していた。アマゾンなどのサービスは決して途切れることがなかったからだ。顧客は「セルフサービスの選択肢や非接触型の保険金請求手続きがないのはなぜか」といった疑問を投げかけている。こうした内外からの圧力を受け、損害保険会社は自社の事業と業務モデルを見直し、デジタルツールや新興テクノロジーの活用を拡大する機会を捉えようとしている。それに伴い、業務の一部をアウトソースすることも選択肢の1つとなるだろう。
ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)はアウトソーシングの一形態で、企業の業務プロセスを外部の専門業者に委託するものである。保険分野のBPOサービスプロバイダーは商品開発、マーケティング、保険契約管理および付帯サービス、保険請求管理を含む保険バリューチェーン上のサービスを受託することで保険会社をサポートする。保険会社や保険契約者を支えるその他のサービスもアウトソーシングの対象に含まれる。アウトソーシングが保険会社にもたらすメリットとして、業務の効率化、コアコンピタンスへの注力、商品化のスピードアップ、最新テクノロジーに併せて新たな人材や経験の確保、効率的なコスト構造を持つ組織の構築などが挙げられる。
本レポートではBPOサービスプロバイダーへの取材をもとに保険のコア業務におけるBPOサービスの利用状況を分析しており、世界の損害保険向けBPO市場をめぐる議論に一石を投じる内容となっている。世界各地の保険向けBPOの現状を把握するため、セレントは保険会社にBPOやその他のサービスを提供している270の企業に調査への参加を呼び掛けた。その結果、生命・損害保険のいずれかを手掛けるベンダー16社から643の案件に関するデータを得ることができた。このレポートでは、損害保険分野に焦点を当てる。