香港のリテール投資市場
Abstract
2002年以降の株式市場の記録的な好況を受け(2002~2007年の市場成長率は年率42%)、香港では個人投資家の数が急増しました。セレントの推計によると香港の個人投資家は200万人以上に達し、うち約10%がアクティブトレーダーであるとみられます。
セレントの最新レポート「香港のリテール投資市場」は香港のリテール投資市場の概要を明らかにし、特にアクティブトレーダーに焦点を当てています。香港の金融市場は発展が進み、成熟度が高いことが特徴です。金融市場全体の時価総額は対GDP比で約600%に達しています。また、金融セクターの生産高はGDPの約17%を占め、アジアの他の市場に比べて大幅に高くなっています。
香港の個人投資家は豊富な投資知識を持ち、比較的所得が高いという傾向があります。また、世界で最もアクティブトレーダーの増加率が高い市場の1つでもあります。しかし、香港のアクティブトレーダーは表面的な洗練度が極めて高いにもかかわらず、投資対象が株式に偏っているほか、海外市場やデリバティブ商品への投資を敬遠する傾向があります。香港のデリバティブ取引契約のうち国内投資家によるものは17%にすぎず、しかもこの比率は過去5年間低下を続けています。香港のアクティブトレーダーは新商品に対する関心も低く、常に投資対象となる新商品を探している投資家は全体の19%と他国に比べ際立って低くなっています。
出典:セレント
「投資家がデリバティブ投資に消極的なのはリスクが大きいからであり、実際にデリバティブ市場で損失を抱えている投資家もみられます。こうした商品に投資するためには高い知識が求められますが、アクティブトレーダーをはじめとする個人投資家は学習熱心で、様々な情報ソースを利用して知識の向上に努めています」と述べるのはセレントのアナリストで今回のレポートを執筆したアリン・レイです。
投資対象として圧倒的に人気が高いのは株式で、株式現物取引の28%を国内投資家による取引が占めています。ミューチュアル・ファンド市場も急速に拡大しています。
香港では個人投資家の株式取引の約70%が銀行を通じて行われており、銀行は証券市場で強固な基盤を築いています。また、個人投資家の間ではオンライン取引が主流となっています。2008年には、個人投資家による株式売買高の18%、デリバティブ売買高の40%をオンライン取引が占めたと推計されます。これに伴いここ数年でオンライン証券が急増し、顧客獲得をめぐる競争が激しくなっています。
本レポートでは、商品カテゴリー別に個人投資家の動向を資金配分、人口構成比、投資スタンスなどに基づいて詳しく分析しています。アクティブトレーダーの取引スタイルについても分析しています。また、香港の金融市場と個人消費者向け商品の概要を示しています。
本レポートは28図を含む34ページから構成されています。