欧州における取引後処理業界の最新動向:域内統合プロジェクトが形作る業界再編への道
Abstract
欧州における、単一市場および統合市場の形成を目指すユーロシステムの試みは、欧州の取引後処理業界に革命をもたらしつつあります。
KEY RESEARCH QUESTIONS | |
1 | 欧州のCSDに変革を促す要因、またその影響は? |
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欧州のCCPをめぐる主なトレンドと課題は? |
3 | 欧州の取引後処理は今後どのように進化していくだろうか? |
本レポートは欧州の中央清算機関(CCP)と証券集中保管機関(CSD)にみられる主なトレンドと現在の発展状況を明らかにしています。ユーロシステムの「Target 2証券(T2S)」プロジェクトおよびCSD規制は、他の多くの規制とともに、欧州のCSDをめぐる環境を再形成しつつあります。
決済業務がT2SプラットフォームにアウトソースされるとCSDは収益を失うため、それを埋めるための新たな収益源を見つける必要があります。資産サービスにその役割を求めるのが自然な流れですが、この分野ではカストディアンや国際的なCSDとの競合を強いられることから、全てのCSDの成功が約束されているとはいえません。業界再編の動きが進む中、少なくとも当面はCSDが市場撤退を迫られることは考えにくいものの、その役割は大幅に低下する可能性があるでしょう。
国際的なCSDは複数の市場で国際証券に対応できる能力を備えており、流動性と担保管理機能も確保していることから、今後市場でのポジションをさらに高めていくでしょう。
CCPの相互運用性の拡大を狙った規制改正を受けて業界では競争がさらに激化し、再編が進む可能性があります。より広範囲な市場を取り込み、強固な資本基盤を持ち、効率的なテクノロジーと業務機能を備えたプレーヤーは市場シェアの獲得に成功するでしょう。株式決済のコモディティ化が進む中、各プレーヤーは店頭デリバティブを中心とするデリバティブの決済を今後の成長ドライバーにすることを目指しています。
「現在進みつつある規制改正や市場の構造変化は、市場の調和と安定化に向けた動きであり、さらなる競争を促すとみられます。市場の安全性、安定性、リスク管理をより重視する流れは、大手プレーヤーにとって有利に働くでしょう」とセレント証券プラクティスのアナリストでレポートを執筆したアリン・レイは述べています。
レポートではまず、欧州における取引後処理の現状について説明し、次にCCPおよびCSDに影響を及ぼす変化の主な要因を明らかにし、それらが取引後処理のエコシステムにどのような影響を与えるのか予想しています。さらに、進行中の変化に対応するために市場参加者がとっている戦略を紹介し、最後に、欧州の取引後処理の今後の進化の方向性についてセレントの見解を示しています。