リスク管理とバーゼルⅡ(新BIS規制)を巡る状況:市場動向途中経過
Abstract
(このレポートは2005年11月15日に"Risk Management and the Basel II Game: Market Updates at Halftime"というタイトルで英文で発表されましたが、和訳版を2006年2月20日に発行しました。)
欧州では他の地域に先駆けて新BIS規制(バーゼルⅡ合意)が導入される予定ですが、同規制準拠プログラムにはなお不統一感が残ります。そして多くの金融機関が誤った判断や過小評価をした結果、大規模な再投資や作業のやり直しを迫られています。
新BIS規制の導入プロジェクトは、少なくとも欧州では大きな潮流を生んでおり、北米やアジアでも程度の違いこそあれ広がりを見せています。ただし、欧州全域の進展状況には依然二極化の様相が続いていますが、それは主に規制の解釈の差、銀行の集中度、金融機関が自行への利点としてどの程度見込んでいるかその度合などによるものです。
セレントは最新レポート「リスク管理とバーゼルⅡ(新BIS規制)を巡る状況:市場動向途中経過」で、新BIS規制が金融機関のリスク管理の実務に与える影響を検証し、北米、欧州およびアジアの各地域における導入状況を再点検するとともに、規制プロジェクトに影響を与える可能性のある要素についても論じています。
今回浮き彫りとなったのは、リスク管理の重要性が増したという事実だけではなく、不透明性や潜在的損失を積極的に管理していくための説明責任や監督責任の所在が経営幹部ひいては取締役会レベルにまで及んでいるという点です。
ここ数年は、新BIS規制などの導入を契機に全社レベルで信用リスクおよび業務リスクの管理ツールや実務面の強化が進み、リスクの数量化と組織内の一元化の両面において進歩が見られます。しかし、ここにきて金融機関は、新BIS規制関連のプロジェクトを通じて、単なる法令遵守を超えた価値を生み出し、同時に複数の規制プロジェクトを効果的に進めていくためには膨大な作業が必要であることに気づき、準備段階のコンプライアンスプロジェクトでどのような成果が得られるかより現実的な見方になってきました。
「金融機関への取材を通じてしばしば驚かされるのは、新BIS規制とその他の規制案件との間でシナジー効果が生じる可能性があるにもかかわらず、金融機関が規制プロジェクトに対して断片的なアプローチしかとっていないことです。ほとんどの金融機関は、規制プロジェクトを生かす方法を探す端緒に立った段階です」とセレントのアナリストで今回のレポートを執筆したキュビラス・ディンは述べています。
「長期的には、多大なコストを要する規制プロジェクトに断片的なアプローチで臨むだけの財務的な余裕が金融機関にあるかどうかまだわかりません。断片的なアプローチを持続させるのは難しいことです。そして、長い目で見ればコスト効率の向上につながるシナジー効果が確実に見込める一部の特定分野があるはずです。」
レポートでは、BIS規制が金融セクターにおけるリスク管理実務の全般的な発展に果す役割、金融機関が取り組んでいる課題、最終的な新BIS規制への移行を特徴づけるトレンドや規制上のシナジー効果についても論じています。
このレポートは14の図表を含む全34ページで構成されています。