バイサイド向けデリバティブ/投資リスク管理ソリューション:リスク・リターンの均衡を最適化する
Optimizing the Risk-Return Equation
Abstract
金融市場と資産価格をめぐる不透明感が長引くなか、投資リスクの管理に注目が集まっています。バイサイドの金融機関はリスク管理体制およびシステムの強化を図り、今後の市場の混乱に対応しようとしています。金融機関が効率性を改善させるためには、優れた投資リスク管理システムを備えることが不可欠となっています。
市場構造、規制およびビジネストレンドは、金融機関に業務およびシステム基盤の強化を迫っています。バイサイドの金融機関が投資リスク管理のベストプラクティスを実践するには、投資リスクの管理プロセスと自社のポートフォリオ構築、取引および全社ベースのリスク構造を戦略的に統合するための一貫したアプローチをとる必要があります。
セレントの最新レポート「バイサイド向けデリバティブ/投資リスク管理ソリューション:リスク・リターンの均衡を最適化する」は、金融危機、システムの混乱、規制の改正(これらに株式のリターン低下が加わる)が、バイサイドの金融機関の長期的な動向に変化をもたらしてきた、と指摘しています。長期的な投資家の多くが規制や会計制度の変更に応じてポートフォリオのリスク低減を進めていることは、金融業界にとって最も注視すべき点でしょう。具体的には、時価会計への移行や自己資本比率の引き上げ、さらには組織全体のリスク許容度の引き下げなどです。こうした変化に伴い、多くの金融機関は緩衝材となる高流動性商品への投資を増やしています。中には、流動性の低い商品への投資を一切止め、リスクとボラティリティの高い資産に振り向ける資金を減らしているところもあります。一方、投資家はアルファとベータの区別を意識しているため、運用マネジャーは不透明な市場環境下でもアルファ創出を求められるようになり、デリバティブ取引を導入して投資リターンの向上を図るケースが増えています。
「ポートフォリオ全体の市場、カウンターパーティ、流動性、信用リスクを測定・監視するリスク管理システムの導入および強化への関心は明らかに高まっています。全てのエクスポージャーを監視できるようになれば、金融機関はカウンターパーティの信用が何らかの形で低下した場合にも迅速に対応できます。また、流動性リスクの管理機能や包括的なリスク分析・特定ツールといった様々な機能を備えることで、自社の流動性リスクと全社規模のエクスポージャーを常に把握することができます」と、セレントのリサーチディレクターでレポートの共同執筆者であるキュビラス・ディンは述べています。
「フロントオフィスからバックオフィスまで、投資リスク管理の全過程に関与する全ての部門に対応可能なソリューションは、リスク分析機能のみに限定されている傾向があります。こうしたソリューションの多くは多元的なモデリング機能を備えていません。仮にその機能があったとしても、規定のモデルや構造的なモデルのみを提供するケースがほとんどでしょう。これに対してスタンドアローンタイプの投資リスク管理システムの場合、ユーザーは統計的モデリングの機能を使って、過去のデータに基づき統計的要素を推計することができるため、より柔軟で強力なモデリング機能を手に入れることができます」と、セレントのインド・フィナンシャルサービスグループのアナリストでレポートの共同執筆者であるスリークリシュナ・サンカーは述べています。
今回の調査の一環として、セレントはAlgorithmics、Calypso、Misys Sophis、MSCI RiskMetrics、MurexおよびSunGard APTのベンダー6社が提供する投資リスク管理システムを取り上げ、セレント独自の「ABCDベンダービュー」に基づいて評価しました。これはテクノロジーの先進性、機能の幅、顧客基盤、サービスの充実度という4つのカテゴリーごとに各ベンダーソリューションの相対的なポジションをランク付けするものです。