リモートキャプチャー:次に注目されるキャッシュマネジメントの未開拓分野
Abstract
預金サービスを巡る競争において、新規法人顧客の獲得は困難な状況が続いてきました。また、法人顧客にとって、手数料などの価格が預金を決定づける主要因となることが多く、支店の立地条件は預金を制約する要因となってきたのです。しかし、今や状況は変わりつつあります。「リモートキャプチャー」が地理的および価格上の障害を取り除きつつあるからです。セレントは、向こう1年間で1億5,000万~2億米ドル(約160億~210億円)の法人預金が「リモートキャプチャー」サービスを提供する銀行に預け替えられると予測しています。
銀行は、リモートキャプチャー(商業上の拠点における小切手画像の取り込み)というめったに巡り会えない巨大なビジネスチャンスをもたらす未開拓分野を前にしています。この分野は全くの未開拓市場です。500を超える銀行が関心を示しているにもかかわらず、実際にサービスに乗り出している銀行はごくわずかにとどまっており、多くは、サービス内容や価格設定を巡ってなお試行錯誤を続けている状況です。しかし、この未開拓市場は手の届くすぐそこにあるのです。導入要件の厳しい他の分散型キャプチャー方式と異なって、リモートキャプチャーの導入は比較的容易だからです。その上、銀行はこの導入によって、小切手イメージングに対する投資を回収する新たな手段を得るでしょう。また、この未開拓市場は将来性に富んでいます。まず、初めに、支店に小切手を持ち込む手間が省けることを歓迎する企業からの需要急増が見込まれます。
セレントの銀行プラクティスのマネージャーで今回のレポートを執筆したアレンカ・グリリッシュは次のように述べています。「長い目で見ると、リモートキャプチャーによって預金サービスの『収益』が大幅に拡大する可能性は低いでしょう。むしろ、銀行間の収益再配分が進行すると見られます。すなわち、短期的には、いち早く参入した銀行が預金残高を伸ばすと同時にプレミアム価格を獲得しますが、出遅れ組には損失が生じるでしょう。ただ、前者が明らかに競争力で勝っているとはいえ、当初の需要の高まりが一巡すれば、新たな争奪戦に突入すると見られます。銀行は、決済サービスの宿命ともいえる商品のコモディティ化と価格競争をいかにして避けるかという重大な局面に直面するでしょう。そうした状況では、運転資本の改善と価格を巡るバリュー・プロポジションを状況に応じて再定義していくことのできる銀行が優位に立つと考えられます。一方、1件当たりの手数料に固執する銀行は地歩を失い、価格低下圧力にさらされることになるでしょう。」
レポートでは、この分野の代表プレーヤーであるファースト・ホライゾン、バンク・オブ・アメリカ、ウェルス・ファーゴ、Creative Payment Solutions (CPS、BB&T Bankの子会社)、Sterling Savings Bankの5行の取り組みを紹介しています。
注)米ドルから日本円への換算レートは、2005年4月28日の仲値(東京三菱銀行公表による)を参照。