証券分野における銀行の現状と戦略
Abstract
(このレポートは2004年2月13日に"Bank-Affiliated Brokerage Divisions"というタイトルで英文で発表されましたが、和訳版を2004年11月12日に発行しました。)
米国の富裕層を対象とした金融サービスの市場で銀行の参入シェアは90年代初めには60%を超えていましたが、現在ではそれがわずか24%にまで落ちています。
銀行は顧客への証券関連商品の販売拡大を目指していますが、常に証券会社に一歩先を越される状況の中で苦戦を強いられています。銀行がまだ企画段階にすら至っていなかった時期に、証券会社はすでに革新的な商品の投入、オープン・アーキテクチャ戦略、営業力強化のための人材の登用などを実践していました。その結果として銀行は90年代に証券会社に巨額のビジネスを奪われて以来、これを巻き返すことができずに今日に至っています。米国内のミューチャル・ファンド販売額に占める銀行のシェアは17%にとどまっているうえ、生命保険販売額ではわずか1%、マネージド・アカウント残高も3%未満という低水準に甘んじています。超富裕層対象市場における銀行のシェアは24%にすぎず、証券会社の60%を大きく下回るばかりか、ミューチャル・ファンド会社と比較しても低い水準となっています。セレントの最新レポート「証券分野における銀行の現状と戦略」は、銀行の出遅れの原因を詳細に分析するとともに、銀行が本格的な投資商品提供者としての地位を確立するために実行すべき施策を提言しています。
実際のところ、今後の見通しについては良い兆候もみられます。銀行は証券会社からアドバイザーとなる人材を引き抜き、それに伴いマネージド・アカウントの獲得にも成功していると考えます。同分野における2003年9月時点の銀行のシェアは5.8%と前年同月の3.8%から拡大しており、ますます重要性を増す同市場で競争力を高めつつあることがうかがえます。
「銀行は、銀行を通じた投資活動を好み、いまだ資産蓄積途上にある団塊世代の富裕層をターゲットとすることで、既存の物的・人的資源を有効に活用しています」と、セレントの証券取引・投資グループのアナリストで本レポートの著者であるアダム・ジョセフソンは語っています。
本レポートでは、BB&T、JPモルガン・チェース、RBCフィナンシャルグループおよび北米の某大手銀行のビジネス戦略についても紹介しています。