AML(マネーロンダリング防止策)はデータを基盤に構築されているが、金融機関が共通のデータ管理という課題に苦戦していることから、こうしたデータが十分に活用されていない。取引の増加と加速化、および規制当局によるモデルリスク管理に関する審査の強化を受け、金融機関はデータ管理アプローチの見直しを余儀なくされている。
Abstract
データ管理の向上には時間がかかるが、近年は多くの金融機関の間で、データサイロを破壊し、データアーキテクチャーを簡素化するといった変化が起きている。こうした金融機関は、データ定義とフォーマットを標準化し、さらには商品、ビジネスラインおよび地域間でデータモデルを標準化することにより、データの再利用性の向上を図っている。こうした取り組みの中では、新たなテクノロジーが重要な役割を果たすことができる。すなわち、新たなテクノロジーにより、情報の自動抽出、欠損記録の入力、データ入力エラーの修復、重複記録の解消、情報およびプロファイルの充実と集約、レポート提出など、多数のデータ管理作業の自動化および合理化が可能になる。
生データからインサイトと知識を抽出するために必要な優れたデータ管理慣行
Source: Celent
人工知能(AI)と機械学習の技術を利用するためには、膨大な質の高いデータが不可欠であり、こうしたデータがAML業務に変革をもたらそうとしている。初期調査とパイロットプロジェクトの結果、こうしたデータにより効率性、生産性およびカバレッジが大幅に向上することが示された。リスク・スコアリングがより効果的となり、顧客のプロファイルや行動の変化に対応できるようになるため、顧客のライフサイクル全体にわたってリスクを継続的にモニタリングすることが可能になる。
パイロット運用から本番運用に移行し、AIを工業化するためには、金融機関はデータの保存・処理の方法を再検討する必要がある。クラウドがデータの大容量ストレージと拡張性、オンデマンドのハイパフォーマンスコンピューティング、および無限の柔軟性を提供していることから、クラウド技術の進歩によって新たな領域が開かれつつある。また、最近のアプリケーションプログラミングインターフェース(API)の発展により、シームレスな接続性とワークフロー連携のための新たな方法が提供されている。またAPIは、異なるアプリケーション間の相互作用を自動化することができ、金融機関がマイクロサービスを基盤とするアーキテクチャーを採用する上で役立つ。
一方で、新しいテクノロジーが新たな可能性の世界を開くにつれ、デジタル時代の金融機関は新たな課題に直面することになる。今後はデータプライバシーとセキュリティが最優先課題となるため、金融機関はアクセス制御と暗号化技術を強化し、データ損失やデータ盗難を防ぐ必要がある。また、データプライバシーに関する多種多様で複雑な規制を遵守するために、データホスティングやリソースのローカリゼーションに関する運用上の取り決めを再構築する必要も出てくる。従って、デジタル時代のデータガバナンスでは、透明性、監視および統制の枠組みに重点的に取り組み、データの責任ある使用を徹底する必要がある。
本レポートはNICE Actimizeの委託を受け、セレントが全面的な編集権を有している。
(詳しい情報は、セレント北川俊来TKitagawa@celent.comまでお問合せください)