米国金融機関におけるデジタル決済:リサーチパネルシリーズ:パート3
2016/01/22
ジーン‐マリー・ウビゴー
Abstract
セレントの「デジタルリサーチパネル」に基づくシリーズの第3弾です。今回は42のパネリストを対象にデジタル決済に関する優先課題と実績について調査しました。
KEY RESEARCH QUESTIONS | |
1 | デジタル決済は数ある優先課題の中でのどの位置にあるか? |
2 |
銀行業界ではデジタル決済に関してどのような経験を持つか? |
3 | 銀行業界ではEMVへの移行がどの程度進んでいるか? |
デジタルリサーチパネルシリーズの第1弾のレポートでは、銀行および信用組合は今後取り組むべき優先分野としてデジタル決済を挙げていると報告しました。2015年10月は米国の決済業界にとって2つの重要な節目となりました。Apple Payのスタートから1周年、そして債務のEMV仕様への移行の期限を迎えたことです。今回の調査は、その直後2015年11月に実施されたものです。
レポートでは主な調査結果として以下を挙げています。
- 回答者のほとんどはデジタル決済の重要性を認識しており、デジタル決済に投資する目的は先発組に入るためである。
- デジタル決済をめぐる回答者の関心は、ウォレットサービスでトップに立ち、その地位を維持できるか否かに集中している。また、AppleをはじめとするITのトップ企業が戦略変更しデジタル決済でより優位に立つのではないかと懸念している。
- ほとんどの金融機関は、独自ブランドのデジタル決済を提供すべきであると考えている。しかし実際には、HCEベースの独自ウォレットを始めるのではなく、第三者のウォレット決済サービスと提携するケースが多い。だがP2Pソリューションには積極的に取り組んでおり、51%が商品化している。
- 現時点でVisa CheckoutおよびMasterPassに参加している金融機関はごくわずかだが、31%はCurrentCへの参加を検討していると回答した。
- 店頭決済に占めるモバイル決済の割合が20%以上を超えるとみられる時期について、「3年後」との回答は全体の6%にとどまったが、「5年後」とする回答は42%に達した。
- EMVへの移行に関して、クレジットカードについては完了したとする回答は全体の29%、デビットカードは17%だった。一方、デビットカードとプリペイドカードについては移行を開始したばかりだという回答が多く、移行を完了したデビット/プリペイドカードは全体の20%に満たないとする回答が71%に達した。
- 信用組合の63%がクレジットカードを一挙にEMVに移行したと回答したのに対し、銀行は35%にとどまった。また、デビットカードについては早めにEMVに移行する戦略が主流だが、プリペイドカードは期限切れになった時点で移行するケースが多い。
「金融機関の多くがデジタル決済を最重視していることは明らかです。しかし、多くはどの分野にどれだけ投資するかを決めかねているとみられます。銀行および信用組合は、顧客はどこを最も問題視しているかを見極める必要があります。それが、第三者からの攻勢を最も受けやすい分野になるからです。また、特にデビットカードのEMVへの移行作業を加速させ、デジタル決済に専念できる人材を確保すべきでしょう」とセレント銀行プラクティスのシニアアナリストでレポートの共著者であるジルビナス・バレイシスは述べています。
本レポートは36ページから構成され、20の図表が掲載されています。