欧州のシンセティックETF:改革に備える
Getting Ready for Reform
Abstract
欧州は、世界を代表するシンセティック(合成)ETFの取引市場です。2006~10年に欧州で組成されたシンセティックETFの数は米国やその他の市場を上回っています。2010年に全世界で組成されたETFのうち、欧州で組成されたものは90%近くを占めています。
セレントの最新レポート「欧州のシンセティックETF:改革に備える」は、欧州におけるETF市場の進化の過程は米国やアジアと大きく異なっていると指摘しています。米国は規制が厳しいため、シンセティックETFより現物ETFの方が活発に取引されています。一方、欧州市場では、UCITS(欧州連合投資信託指令)でシンセティックETFの比較的自由な組成・運用が認められています。
欧州のETF市場は、2005年から11年にかけて着実に成長してきました。この間に市場の時価総額に占めるシンセティックETFの割合も拡大し、そのシェアは2005年当時の約21%から11年には45%超に上昇しています。
「シンセティック ETFの人気の高さの一因として、現物ETFに比べて購入価格が安いことが挙げられるでしょう。しかし、その経済的な影響を懸念する声も出ており、欧州証券市場監督局(ESMA)はシンセティックETFがカウンターパーティ・リスクやシステミック・リスクに及ぼす影響を注視しています」と、セレントのシニアアナリストでレポートを執筆したアンシュマン・ジャスワルは述べています。
レポートでは、シンセティックETFを中心とする欧州のETF市場の概要を明らかにしています。その一環として、欧州の規制の枠組みをもう1つの主要市場である米国と比較しています。その上で、欧州におけるシンセティックETFの発展状況を明らかにし、2010~11年の時価総額の推移(世界の市場のボラティリティの変化に伴う)、カウンターパーティ・リスクの問題、規制強化の動きについて説明しています。最後に、シンセティックETFへの投資抑制要因になりかねない重要な課題を指摘しています。