ブランチオートメーション・ソリューション PartⅠ:テラー、プラットフォーム、CRMのコンバージェンス
Abstract
ブランチオートメーション・ソリューションのベンダーが、ここにきて独自のスケールダウン型CRM製品の投入を進めています。しかしながら、ここ10年間を振り返ると、銀行業界ではCRM導入に失敗したケースが目立っています。CRMでは新参であるこれらのベンダーが、より優れたソリューションを提供できるのでしょうか。また、支店を販売拡大の拠点に変えることは可能なのでしょうか。そのためには、システムを導入するだけで十分と言えるのでしょうか。セレントは、ブランチオートメーションを巡るベンダー側のビジョンと銀行の実情を調査し、2つのレポートにまとめました。
セレントの最新レポート「ブランチオートメーション・ソリューション:テラー、プラットフォーム、CRMのコンバージェンス」(2部構成)は、ビジネスとシステムの両サイドから業界のトレンドを分析しています。レポートではまず、銀行がベンダーを選別する上で重要なカギとなるシステム環境の選択肢について検証しています。その上で、セレント独自の評価基準(「ABCD 分析」)に基いてベンダーを分析・評価しました。
リテール銀行はここ20~30年の間、ATM、コールセンター、インターネットバンキングの整備に注力する一方、ブランチオートメーションはおざなりにしてきました。ところが、昨今、預かり資産やクロスセルを拡大するための有効な手段として支店が注目されるようになり、改めてブランチオートメーションに対する関心が高まっています。とはいえ、銀行がブランチオートメーション・ソリューションのリプレースに踏み切る主要因は、依然既存システムの陳腐化にあります。
ブランチオートメーション市場は、預かり資産10億ドル(約1,060億円)未満の中小銀行と50億ドル(約5,300億円)超の大手銀行、その中間のグレーゾーンに大別されます。中小銀行にブランチオートメーション・ソリューションを提供するベンダーの多くは、その銀行のコア・システムを構築し、その銀行のシステム全般において優位な立場にあります。これらのベンダーは、ベストトータルソリューションを提供しようとしており、この場合の技術的なポイントはコア・システムのデータの新規システムへのマイグレーションにあります。
一方、大手銀行は複数ベンダーのシステムを採用しているケースが多いため、ブランチオートメーションベンダーのソリューションは、バックエンドシステムを統合するものになります。これらのベンダーは、銀行のニーズに合わせてカスタマイズ可能なビジネスロジックをあらかじめ組み込んだ独自のミドルウェアレイヤーを採用しています。下図は、ベスト・オブ・ブリードのソリューションを提供するこれらのベンダーをセレントの基準で評価した結果を示しています。
中小、大手の両銀行をターゲットとするベンダーは、独自のCRMソフトウェアの製品化を進めています。セレントが「CRM Lite」と呼ぶこれらのソフトウェアは、そのままテラーおよびプラットフォームソリューションと統合することができ、ベンダーがコア・システムも提供している場合にはそのシステムとの統合も可能です。
セレント銀行のプラクティスのシニアアナリストで今回のレポートを執筆したバート・ナーターは次のように述べています。「ブランチオートメーションベンダーが提供するCRM Liteソリューションは、既存システムとの統合が容易であるとことから、導入リスクがより小さくなります。こうしたソリューションを採用した銀行では収益の改善が見られ、実質的な成果が上がっていることがうかがえます。」
レポートで取り上げたベンダーは、ARGO、Fidelity Information Services、Fiserv、Getronics, Harland、Jack Henry、Open Solutions、PRODUCT4、S1、ユニシスの各社です。
注)米ドルから日本円への換算レートは、2005年4月28日の仲値(東京三菱銀行公表による)を参照。