Abstract
セレントが隔年で実施しているリテールバンキングの最新調査では、過去3回の調査結果とは異なり、「売上実績の改善」がもはや最優先課題ではなくなっていることが明らかになりました。今回、北米金融機関がリテールバンキングの戦略上の最優先課題に挙げたのは「顧客関係」でした。
KEY RESEARCH QUESTIONS | |
1 | 顧客ニーズの変化は、IT投資の優先順位にどのような影響を及ぼしているか? |
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チャネルプラットフォームにはどのような変化があるか? |
3 | 金融機関はオムニチャネルによる顧客エンゲージメントにどこまで対応しているか? |
いまや金融機関にとっては顧客関係の改善が最優先課題となっています。過去3回の調査結果と大きく変わった点は、販売実績の改善がもはや最重視されなくなっていることです。今回調査対象となった北米の112の有力金融機関は、リテールバンキングにおける戦略上の最優先課題は顧客関係であると答えています。
2010年以降、IT投資の優先分野は支店からデジタルチャネルへと着実にシフトしています。大手金融機関の多くは、現在モバイルチャネルに最も力を入れています。また、プラットフォームの機能拡充は銀行のテクノロジー戦略上の最重要課題です。
デジタルはもはや単なるセルフサービスの販売チャネルではなく、セルフサービスに加えてサポート付きでも総合的なサービスを提供する顧客エンゲージメントの主要ツールになっています。こうした認識が浸透するのに伴い、金融機関はチャネルプラットフォームの統合を進め、その手始めとして既にデジタルチャネルの統合に取り組んでいます。
金融機関は戦略上の最重要課題を実現する上でオムニチャネルが重要であることは認めているものの(その重要度を最大5.0に対して4.1と評価)、具体的な取り組みを始めていると回答した金融機関は半数にすぎません。その実現に向けて担当チームを設置しているところは全体の約半数、戦略を実践しているところは10社に1社の割合にとどまっています。
「今やほぼ全ての金融機関が、競争力のあるモバイルバンキング・プラットフォームの構築を最優先課題に掲げており、その判断に間違いはありません。こうしたトレンドは、最新のモバイルバンキング機能の導入ペースに如実に表れています。」
「一方、多くの金融機関が2つめの優先課題に挙げているオムニチャネルの実現に関しては、取り組みが十分進んでいないのが現状です。調査対象の金融機関の半数は、担当チームを立ち上げておらず、実現に向けた戦略を策定できていません」と銀行プラクティスのシニア・アナリスト、ボブ・メーラは指摘しています。