ニューヨーク証券取引所:打開策は変革
Abstract
セレント・コミュニケーションズは、ニューヨーク証券取引所が現在直面する問題の解決策として、新たな市場構造モデルと市場間取引システムの構築、分離規制の適用を提案します。
ニューヨーク証券取引所(NYSE)は危機に直面しています。コーポレートガバナンス制度の欠陥、経営トップへの巨額報酬、スペシャリストの不正取引疑惑、取引所の改革案を巡る激しい意見の対立などにより、NYSEに対する一般投資家の信頼は大きく揺らいでいます。NYSEが投資家、証券取引委員会(SEC)および分裂状態に陥った会員の要求に十分答えるためには、思い切った改革の実行が欠かせないことは明らかです。
セレントは最新レポートの中で、NYSEの現行の市場構造とコーポレートガバナンス制度に起因する諸問題について分析しています。またレポートでは会員権価格や市場シェア、財務実績などが成功への決定的な要因と分析していますが、このことは、NYSEが全ての会員の要請に応じてこなかったことを示唆しています。
同レポートでは様々な市場構造の長所と短所を検証していますが、具体的には競合ディーラーモデル、スペシャリスト制度、仲介人を排したECN(電子証券取引ネットワーク)モデル、実際の立会取引とリモート・マーケット・メーキングの機能を併せ持つハイブリッド・モデルなどを取り上げています。また、これまでNYSEがECNや地方取引所の攻勢をいかに阻み続けてきたかについても論じています。レポートの結論として、NYSEに対する提言をまとめています。
セレントは、SECの介入がなければ、改革によって成果が得られるとわかっていても、NYSEが現行の市場構造の大幅な変更に踏み切ることはないとみています。 監督と執行の分離規制が適用されるのは取締役のレベルにとどまるでしょう。次期CEOがいかに奮闘したところで、スペシャリスト制度も現行のまま存続することになるでしょう。非相互会社化について検討されることはあっても、最終的には会員によって拒否されると思われます。しかし、SECが介入することで現行の市場間取引(ITS)モデルが刷新される可能性が高く、その結果、競合する取引所に取引参入の機会が与えられ、NYSEが持つ80%という高い市場シェアを脅かすことになると考えられます。
「一般投資家がNYSEの諸問題を厳しく監視していくことは、これ以上ない変革への起爆剤となるでしょう。NYSEの会員は最近コーポレートガバナンスの新指針を承認し、これによって正しい方向に重要な一方を踏み出したといえますが、さらなる改革を進めていく必要があります。利益対立や市場の効率性を阻む障壁を取り除くためには、他の資本市場に導入されている代替的な市場構造モデルにも目を向けるべきでしょう」と同レポートの著者であるジョディ・バーンズは述べています。
同レポートは本文37ページから成り、7つのグラフが掲載されています。