中国保険業界におけるデジタルを利用したビジネスモデルのイノベーション【抄訳版】
Abstract
(このレポートは2015年7月15日に" Evolving Digital Business Models: How China Is Advancing the Insurance Proposition to Take Advantage of the Digital Age" というタイトルで英文で発表されましたが、抄訳版を2015年10月1日に発行しました。)
保険業界内に新たなインターネット・エコシステムが構築されるなか、保険会社はデジタル思考で商品やサービスのイノベーションを進めています。
KEY RESEARCH QUESTIONS | |
1 | 「デジタル思考」とは? |
2 |
保険業界における「デジタル思考」とは? |
3 | 中国の保険業界のデジタル思考から、世界の他の地域の保険会社は何を学べるか。 |
本レポートは保険を取り巻くインターネット・エコシステムについて分析し、中国の保険業界がいかにデジタル思考を取り入れてきたかを紹介しています。また、世界の他の地域が同国の保険会社のデジタル思考から学ぶべき点をまとめています。
インターネットが普及した現在、あらゆるビジネスがインターネットと無縁ではいられません。中国ではeビジネスプラットフォーム、モバイル決済プラットフォーム、ソーシャルネットワークがより重要かつ支配的な役割を担いつつあります。保険会社もより大規模なエコシステムの一員としての認識を持ち始め、垂直統合型プラットフォーム、第三者のeビジネスプラットフォーム、WeChat、Alipay Wallet、従来型チャネル、戦略的パートナーとの関係見直しに取り組んでいます。
中国の保険会社はデジタル思考を取り入れ、商品やサービスのイノベーションを進めています。この場合の「デジタル」は単にワールドワイドウェブを示す狭義の意味ではなく、ソーシャルメディア、モバイルアプリ、ガジェット、その他のデジタルサービスを含む幅広いコンセプトを示しています。デジタル思考とは、無料(またはほぼ無料)のサービス、顧客中心主義、ユーザー経験、社会的経済、データ・分析主導のビジネスに基づいてビジネスモデルを開発することを示します。
レポートでは、①中国の保険会社が無料またはほぼ無料の商品・サービスを通じていかに大規模な顧客基盤を獲得しているか、②商品やプロセスの簡略化、直観的なユーザーインターフェース、ゲーミフィケーション、その他のデジタルサービスを通じていかにユーザー経験を向上させたか―を示す多くの事例を紹介しています。また、人々の共有を可能にし、促進する商品やサービスをいかに開発したか、ビッグデータやアナリティクスを利用していかにオーダーメイドの商品/サービス/マーケティングを提供しているかを説明しています。
国外からみると、中国でイノベーションが進行していることは認識しても、「自分たちの市場はビジネスの規模が小さいため、中国のような革新的なモデルを適用することはできない」と簡単に決めつけてしまいがちです。しかし、保険ビジネスにデジタル思考を持ち込むことで、世界の他の国も中国から学べることはあるはずです。
「保険会社は、これまで自分たちが保険エコシステムの中心にあると考えてきました。しかし、新たなエコシステムの環境下では、①ビジネスモデルを見直す、②拡大するビジネス価値連鎖の中でシナリオ型サービスを提供する、③引受け業務に特化する―のいずれかの選択を選択を迫られることでしょう」とセレントのアジア金融サービスグループのシニアアナリストでレポートを執筆したウェンリ・ユアンは述べています。
近日発行予定のレポート「Digital Strategies in Insurance: Lessons from China」では、デジタル思考から生まれた、持続可能なデジタル戦略を提案します。