中国農村部の金融市場
Abstract
中国農村部では、金融サービスに対するニーズがかつてないペースで拡大しています。新たな需要は、この地域に基盤を持つ金融機関に大きな潜在成長力があることを示唆しています。
中国農村部は広大な未開拓市場です。農民の所得改善や農村近辺への金融機関および支店の進出は、農村部の急速な発展を促すとみられます。セレントの最新レポート「中国農村部の金融市場」 は、この地域の人口構成や経済活動の背景を明らかにしています。
農村部では、金融資源が圧倒的に不足しています。農村部の支店における業務効率の低さや大幅な赤字を受け、1990年代終わりには国営商業銀行がこれらの地域から大規模な撤退を開始しました。地方銀行や信用組合も支店の削減や統合を進めたため、省立金融機関の数が減少しました。2007年末時点で省立金融機関の支店数は124,000となり、2004年に比べて9,811(7.3%)減少しています。銀行の支店は省の主要都市に集中し、町や村では少ないという傾向があります。2005年末時点で金融機関の支店がある村は全体の3.28%にとどまっています。
出典:セレント
「これまで農民は、主に預金の出し入れをするために銀行を利用してきました。しかし、農村の経済発展を受けて農民のニーズは預金、融資、送金などにも広がり、ますます多様化しています。こうしたニーズの拡大に伴い、金融機関の不足がこれまで以上に緊急の課題となっています」とセレントのシニアアナリストでレポートを執筆したウェンリ・ユアンは述べています。
本レポートは、中国農村部における銀行および保険市場の状況を明らかにしています。銀行サービスに関しては、農民や農村部の企業からの融資ニーズが拡大傾向にあります。農村部への市場参入を目指す金融機関はこうしたニーズに応える魅力的な融資サービスを提供することが不可欠でしょう。
農村部の保険サービスは、全体的に①保険料が少額である②販売・サービス拠点が少ない③販売チャネルが1つに限られる④保険プログラムや従業員が軽視されている―などが特徴として挙げられます。現在、農村部の保険市場は主に大手数社によって支配されており、活発な競争はみられません。しかし、中国保険監督管理委員会が農村市場に特化する保険会社の設立を承認したほか、その他の多くの保険会社も農村市場の成長性を認識していることから、こうした状況は逆転するとみられます。
本レポートは10表と21図を含む全58ページから構成されています。