RAILSBANK: サービスとしてのフルスタックバンキング
Abstract
カスタマージャーニーは、商品視点(従来の銀行のスタンス)から必要に応じてソリューションを提供することを重視する状況的視点へと急速にシフトしつつある。エンベデッド・ファイナンス(埋め込み型金融)やバンキング・アズ・ア・サービス(BaaS)といった新しいモデルを通じてカスタマージャーニーをサポートするオーダーメイド型ソリューションを提供する新たなプロバイダーが登場している。セレントはBaaSを「サードパーティによる銀行ブランドを使った金融エクスペリエンスの投入を可能にする商品・機能のプロデューサー/サプライヤー」と定義している。BaaSは、バンキングのスタックを①カスタマーエクスペリエンス②商品・機能③規制上の認可―の3つに分割する。また、カスタマーエンゲージメントとインフラを区分することで、BaaSの利用者に差別化されたサービスとコモディティ化されたインフラを別々に提供できる。BaaSのレイヤーは全て同一サプライヤー(フルスタックプロバイダー)が提供する場合と、特定のスタック(クレジットカードの発行など)に特化する異なるプロバイダーの製品を組み合わせる場合がある。
本レポートでは、Railsbankと同社製品の進化の経緯を紹介する。Railsbankが提供するフルスタックのBaaSプラットフォームは銀行業界の今後の方向性を示す象徴的な製品であり、より詳しく調査する価値のある企業といえよう。現在は銀行への直販は行っていないが、同社は金融サービスのデリバリーに影響を及ぼす新世代のフィンテックの代表格である。これらのインフラプロバイダーはバンキングへの参入障壁を引き下げ、競争のスピードと経済的意味に革命を起こしつつある。銀行はこうした現実がもたらす脅威と機会の両方を理解する必要があるだろう。
Railsbankは2016年にNigel Verdon氏とClive Mitchell氏が英国で設立したAPI主導のBaaSプラットフォームで、ノンバンクやその他の規制対象または対象外の金融業者に従来からある金融サービス機能へのアクセスを提供することを目指している。同社は3回の資金調達活動で計5,140万ドルを確保した。直近の株式発行を通じて調達した3,700万ドルの資金は国際事業の拡大に充てられる。同社は主にフィンテックやノンバンクと連携し、自社のAPIプラットフォームや英国当局から認可された電子マネー事業を通じてホールセールバンキングへのアクセスを提供している。