資産担保証券(ABS)関連テクノロジー:透明性、投資、リスク管理に関する課題
Abstract
資産担保証券(ABS)は、金融危機によって最も大きな影響を受けた金融商品の1つです。ABSの価格暴落から得た1つの教訓は、「投資家は自らが十分に理解、監視および管理できない投資商品には手を出すべきでない」というものです。
発行体や投資家は少しずつABS市場に戻りつつありますが、過去の失敗を繰り返さないようにしなければなりません。バイサイドの多くの金融機関にとって、ABS投資をめぐる最も根本的な疑問はいまだ解消されていないようにみえます。それは「投資商品のパフォーマンスとリスクをいかに継続して効果的に測定・監視するか」という点です。
セレントの最新レポート「資産担保証券(ABS)関連テクノロジー:透明性、投資、リスク管理に関する課題」はABS市場が 金融危機以降どのように変化してきたかを分析するほか、テクノロジーが市場回復の牽引役としていかに進化するかを予測しています。
ABS分野におけるTRACE導入期限が5月16日に迫るなか、金融機関は業務運営、テクノロジー、コンプライアンスおよび監視体制の要件に対応するため、業務およびシステムの大幅な修正を求められています。本レポートは、こうした課題の解決に向けた指針を示しています。
今回、主に以下の点が明らかになりました。
- 現在、市場で投資家の資金を取り込める商品は、カバード債や類似商品など、安全性の高いものに限られている。ABSは米国市場でより人気を集めるとみられるのに対し、欧州ではカバード債が選好されると考えられる。
- ABSおよびMBS(モーゲージ証券)市場に対しては、ネガティブなイメージがある。こうした見方はモーゲージ市場に起因しているが、ABSのその他の資産クラスに対する関心の低さも反映している。投資家を市場に呼び戻す要因としては、規制とテクノロジーが挙げられる。
- リスクと業務が調整された総合的な環境下で投資分析を行うことが不可欠である。投資家の投資とリスクに関するワークフローの一体化を実現するソリューションを提供するにあたっては、細分化されたニッチソリューションではなくシステムの統合が重要となる。
- 新たな規制は膨大な量のデータ開示を義務付けているため、ソリューションプロバイダーはデータ管理の強化、データ分析の質の向上、高度なストレステスト、リスク管理機能の改善などの責務を負うことになる。
「規制によってストラクチャード・ファイナンスおよびABS関連データのコスト削減とコモディティ化が進むため、減収につながる報酬体系の下で、投資およびリスク管理の厳しい実体を反映させつつ、コスト効率の良い次世代ソリューションが生まれる機運が高まっています」とセレントのリサーチディレクターでレポートの共同執筆者である キュビラス・ディンは述べています。
「答えを模索し続ける中で、回復の第一歩となるのは規制ですが、それによってすぐに利用可能なソリューションが生まれるわけではありません。市場参加者とベンダーの間で、実行可能で市場主導型のソリューションを生み出そうとする動きが活発になる必要があります。そうなって初めて、ABSは持続可能な成長軌道に戻れるでしょう」とアナリストで共同執筆者のスリークリシュナ・サンカーは述べています。
レポートは、ABS市場の今後の見通しとテクノロジーがその回復に果たす役割について論じています。また、同市場で投資家の視点からABS投資のライフサイクルを管理するために利用されているシステムを分析するほか、ソリューションやそのコンポーネントの選別要因を評価しています。
このレポートは21図と11表を含む54ページで構成されています。