Abstract
デジタル主権やデータ主権は法的概念だが、テクノロジーとデータ資産の導入や管理には物理的な側面が絡んでくる。このアジェンダは、国の安全保障だけでなく、デジタル独立という政治的野心を背景としている。ヨーロッパにおけるエネルギー供給リスクは、ウクライナとロシアの戦争によって露呈した。またEUも、外国プロバイダーによるテクノロジーサービスへの過度の依存や、外国プロバイダーが自国政府の法的管轄権や政治的影響力の下に置かれることに懸念を抱いている。しかし、これは欧州特有の懸念ではなく、多くのアジア太平洋諸国の政府もデジタル主権のルールの構築を目指している。一方で、大手のソフトウェア企業やAI企業、ハイパースケーラーが存在し、データプライバシー法制の整備が遅れている米国においては、主権の問題はそれほど大きく扱われていない。
AWS、Microsoft、Google、Oracleおよびその他のハイパースケーラーは、世界中の公共部門や金融サービスのクライアントが必要とするレジリエンスやプライバシー機能を支援するべく、地域のデータセンターのフットプリントに多額の投資を行っている。主権クラウドソリューションは保険会社や保険契約者、相互のパートナーの地域のコンプライアンスに準拠した業務の運営可能にし、その提供は論理的な選択だと言える。
近年の保険業界では、データへの投資を促進するシンプルながらも重要なトレンドが見られている。
• 保険会社のデジタル化とデータ依存はますます進んでいる。処理するデータの量だけでなく、収集または作成するデータの量も増加している。
• データから得られる洞察や、高度なアナリティクスやAIでのデータ活用の可能性などは、保険会社の形を大きく変えるものとなる。
• -データプラットフォーム技術(クラウドや新たなAI技術の出現など)によって、保険会社はデータ資産をより高度に活用し収益化につなげることができる。
• データとAIは、未来の保険商品やサービスの構成要素である。
しかし、AIの大規模展開により、データハウスが十分に整備できていない保険会社が多いという認識が広がっている。セレントが実施した最新のDimensions調査と研究から、サイバーセキュリティやAIに並び、データプラットフォームやデータ管理がテクノロジーの優先事項における最重要課題であることが明らかになった。ただ、AIの大規模導入や新世代のインテリジェントな保険商品を実現するまでの日のりは極めて複雑になっている。