銀行の店舗展開戦略ブーム:愚行か予見か?
Abstract
セレントの推計では、米銀が過去1年間に支店の新設に投じた資金は約60億米ドル(約6,700億円)に上り、うち4億5,000万ドル(約500億円)は新規ブランチ・テクノロジー費用に充当しています。
インターネット・バブルの全盛期には衰退の危機にさらされていた銀行店舗が、ここにきて勢いを盛り返しつつあります。2004年1年間には、1営業日当たり約5店舗の支店が開設されました。インターネット・バンクは、銀行業界に幾つかの教訓を残したものの、リテール・バンキング市場を席巻するには至りませんでした。
セレントは、最新レポート「銀行の店舗展開戦略ブーム:愚行か予見か?」でリテール・ブランチの現状を分析し、昨今のブームが店舗規模の点では縮小化につながったことを明らかにしています。また、銀行が次にとるべき方策も提案しています。
銀行店舗のブーム再来は、愚行なのでしょうか。それとも先見の明なのでしょうか。各行がこぞって支店開設に巨額の資金を投入する中、こうした投資が市場の飽和を招き、その結果銀行が十分な投資利益を上げられなくなることを懸念する声も広がっています。上記レポートの共同執筆者でセレント銀行プラクティスのマネージャーであるアレンカ・グリリッシュは次のように述べています。「こうした懸念にもかかわらず、銀行が支店への投資を止めることは不可能です。ただし、投資は賢明な方法で行わなければなりません。支店をもっぱらトランザクションセンターと位置づける従来の考え方を続けていては、愚行となりかねないでしょう。」今後10年間は、支店におけるトランザクション件数の先細りが予想されます。小切手の利用状況やリモート・バンキングの動向から見て、1つの店舗における1日当たりの小切手関連処理件数は、2002年の364件から2010年には178件に減少する見通しです。この結果、行員が顧客と直接やり取りする機会が減少し、従来の店舗配置が陳腐化するなど、銀行には多大な影響が及ぶでしょう。
レポートの共同執筆者でシニアアナリストのバート・ナーターは、「先見性のある対応とは、企業体質やインフラを販売・サービス主導に移行させることです。今後5年間で優位を確立することができるのは、カスタマー・サービスや販売面でテクノロジーを活用し、コスト効率の良いブランチ・ネットワークの運営を実現する銀行でしょう。」
当レポートは、ブランチ・バンキングの主要トレンドについて取り上げた一連のレポートの第4弾となります。シリーズの第1、2弾は「ブランチ・オートメーション・ソリューション:テラー、プラットフォーム、CRMのコンバージェンス」(2005年5月発行)の第1部と第2部で、第3弾は「大規模が本当に良いのか?:小規模銀行における「CRM Lite」導入の成功例」(2005年7月発行)です。
注)米ドルから日本円への換算レートは、2005年7月29日の仲値(東京三菱銀行公表による)を参照。