リスクマネジメントとコンプライアンス:新たな現実への対応
Abstract
規制強化や競争の激化がリスクマネジメント関連支出に影響し、優れたリスクマネジメントが金融機関の成功を左右する傾向が強まっています。
21世紀に入ってから、金融機関におけるリスク管理およびコンプライアンス機能は規制当局の厳しい監督下に置かれてきました。規制に関する今日の「4大」テーマは、①アンチ・マネーロンダリング②会計基準の統一(IFRS、FAS)③財務報告書(SOX、日本版SOX)④自己資本比率(バーゼルII、所要資本指令(CAD)など)です。セレントでは、世界のリスクおよびコンプライアンス関連投資は2007年の136億米ドルから2008年には140億米ドルの大台を超えると予想しています。最新レポート「リスクマネジメントとコンプライアンス:新たな現実への対応」は、金融機関がリスクおよびコンプライアンス関連プロジェクトで成果を上げるためになすべきことについて詳しく述べています。
金融機関が数々の規制の関門をクリアしたとしても、規制施行後に発生する問題にはさらなる対応をせねばなりません。サブプライムローンやクレジット市場のストラクチャード商品(CDOやその他のハイブリッド商品)をめぐる現在の混乱は、リスクの分配(および再分配)の積極的な追求が及ぼす深刻な影響を示唆しています。このような新たな現実は、透明性のレベル、構造的な整合性、業務管理をさらに改善すべきであることを示しています。
こうした展開を受け、クレジットマネジメントの価値連鎖の様々な要素のより一層の連携が求められ、利益と評価の背反や、急速な市場変動に伴うリスクマネジメント上の課題が浮上するでしょう。規制当局やステークホルダーによる監視が厳しさを増すにつれ、オリジネーション、クレジットポートフォリオの管理、与信管理、業務管理をより積極的に行なわねばならなくなるでしょう。
その他の要因(資産の効率的運用のために様々なステークホルダーの要求を調整する必要があること、「生成し分配する」というパラダイムでの資産ポートフォリオへシフトする傾向が続いていることなど)は、新しいリスクマネジメントの実践に向う新しい流れの原動力であり結果でもあります。
「これらの規制要件を満たすことでインフラ基盤の構築や基本的な規制準拠を達成しようとする金融機関は、リスク管理およびコンプライアンス関連プロジェクトが自社にどのような付加価値をもたらすか、さらに競争上どのような意味を持つかを見極める必要があります」とセレントのシニアアナリストでレポートを執筆したキュビラス・ディンは述べています。「この後数年間は、リスクマネジメント能力の向上によってもたらされる大きな動きがみられるでしょう。」
本レポートは10図と3表を含む32ページで構成されています。