米国のモバイルバンキング: 本格的な普及へ
Abstract
モバイルバンキングは金融サービスの有力チャネルとして普及が広がり、2010年にはオンラインバンキング利用世帯のうち35%が利用するようになると予想されます。
モバイルバンキングの妥当性とその成功の可能性については、これまで疑問視されてきました。しかし、セレントの最新レポート「米国のモバイルバンキング:本格的な普及へ」は、今やモバイルバンキングはすっかり定着しており、今後もオンラインバンキングをはるかに凌ぐ勢いで拡大すると予測しています。オンラインバンキング利用世帯のうちモバイルバンキングを利用している顧客は現在1%にも足りませんが、2010年には全体の35%を占める見通しです。オンラインバンキングにない機能がモバイルバンキングに新規で装備され、それがさらなる利用者を呼び込むでしょう。例えば最終的には、モバイルバンキングを使って店頭での商品購入時に決済を行うことも可能になるでしょう。2010年には、こうした「モバイル端末による非接触型決済」が非接触型決済市場全体の10%を占めると予想されます。
モバイルバンキングに対しては、ジェネレーションYと呼ばれる18~25歳の顧客が特に高い関心を持っており、他の世代に先駆けてその利用に踏み出すと思われます。レポートによると、ジェネレーションYの40%が、取引銀行を選ぶ際の要因としてモバイルサービスを挙げています。5年後には、この世代の大多数が携帯電話のみを保有する世帯となり、携帯端末で頻繁に情報検索や取引執行を行うようになるでしょう。
セレントは、2010年には銀行のコールセンターに寄せられる問い合わせのうち最大で70%が携帯電話から発信されることになると予想しています。このうち半数は、残高照会など基本的な情報に関する問い合わせが占めるとみられます。これらの情報は携帯電話の画面上で即座に入手でき、コールセンターに電話するより時間が節約できます。また、モバイルバンキングを通じて顧客サービスに問い合わせる方が(コールセンターに電話するより)低コストで済むため、銀行による新チャネルの採用を促すとみられます。携帯端末を通じたデータサービスの利用者は所得水準、年齢、人種が多岐にわたっていることから、モバイル金融サービスを含むモバイルコンテンツの利用状況を把握する上で最適な指標となるでしょう。
「モバイルバンキングは単なる残高照会や支払いにとどまらず、将来的には携帯型財布へと進化するでしょう。その結果、オンラインによるロイヤルティプログラム、モバイルマーケティング、非接触型決済などを通じて、銀行のオンライン決済は飛躍的に増加するとみられます」と、セレントのシニアアナリストでレポートを執筆したダン・シャットは述べています。「ロイヤルティやマーケティングにおけるモバイルバンキングの利用は、なお計画段階にとどまっていますが、2008年末には運用が始まり、2010年までにはモバイルバンキングとモバイルによる非接触型決済の融合がみられるでしょう。」
本レポートは16図と6表を含む38ページで構成されています。