ポストトレード処理業界の将来:パート1:影響要因は何か?
Abstract
金融機関はポストトレード処理をあまり重視してきませんでしたが、金融危機を契機にその優先順位は劇的に変化しました。短期的にはコスト削減を縮小する一方、長期的には業務の効率化やシステム戦略によってコストを抑制することを迫られています。
最新レポート「ポストトレード処理業界の将来:パート1:影響要因は何か?」は、ポストトレード業界の将来を左右する様々な要因に注目しています。ここにきて、規制環境は急速に変化しつつあり、それに伴い、特にリスク管理、報告、法令遵守といった分野でミドルおよびバックオフィスの負担が増しています。金融機関がこうした環境の変化に対応するためには、取引サイクル全体をより総合的に捉える必要があり、バイサイドおよびセルサイドの多くの金融機関は既にそれに向けた取り組みを始めています。
取引所間の競争が激化するなか、各取引所は取引・決済処理を行うシステムの効率化を余儀なくされています。現物市場のポストトレード処理業界に大きな影響を及ぼすとみられる要因は何か探りました。
「金融機関ではIT予算が厳しく制約されるなか、その大部分を規制およびコンプライアンス関連投資に振り向けています。そのため当面は、プロセスの効率化を実現するための大掛かりな投資は望めない状況にあります。ただし、多くのマニュアル処理を自動化することでリソースに余裕が生まれるといった視点から、問題解決に取り組む金融機関もでてきています」とセレント証券グループのシニアバイスプレジデントでレポートを共同執筆したアクセル・ピエロンは述べています。
「金融機関は、予算の制約から、ミドルおよびバックオフィス業務のアウトソーシングを検討するようになっています。全ての金融機関が一律の規制要件への準拠を求められていることから、金融機関を問わずそれら規制要件に対応できる、基本コアプラットフォームを提供する「ユーティリティモデル」の構築を始めたベンダーもあります。しかし、こうした製品を各金融機関(特に大手金融機関)の個別ニーズに応じてカスタマイズするのは簡単ではないでしょう」とアナリストでレポートの共同執筆者であるアリン・レイはコメントしています。
レポートではまず、ポストトレード処理業界が果たす役割とこの市場のプレーヤーを紹介し、次に、最新のトレンドを取り上げ、市場の現状を概観します。さらに、この業界の5年後の姿を予測し、まず、今後1年間の業界の動向を左右する要因は何か、そして各要因を詳細に分析し、それらがポストトレード業界全体にどのような影響を及ぼすかを予想しています。続編では、異なる想定とシナリオの下でこれらの要因がもたらす定量的な影響を分析する予定です。