金融サービス業界のオフショアリング: 業務自動化にたどり着くまでの回り道
Abstract
セレントの調査によると、米国の銀行および証券業界では現在230万人がオフショアリングによる失業の危機にさらされています。
世界の金融機関の約3分の1は、事業拠点以外の国の業者に業務を委託するオフショアリングを行なっています。これらの金融機関は今後10年間でオフショアリングの比重を大幅に引き上げるとみられ、新たにオフショアリングを計画する金融機関も相次ぐ見通しです。
セレントの最新レポート「金融サービス業界のオフショアリング:業務自動化にたどり着くまでの回り道」は、オフショアリングの拡大要因、対象となるビジネスプロセス、移転先として人気の高い地域、業界全体の成長性について分析しています。また、オフショアリングに伴うリスクと企業側のリスク管理対策も取り上げています。レポートの結論では、企業間の競争や業務の自動化および統合が進む中で、今後オフショアリングがどのように発展して行くかを論じています。
米国の銀行・証券業界だけでも230万人がオフショアリングに伴う失業の危機にさらされている現状を踏まえると、金融サービス業界として現在および将来におけるオフショアリングの進め方に関してより包括的な戦略を策定する必要があるといえます。セレントの予測では、2010年までに米国外に移転される業務およびITコストは175億ドル(約1兆9,000億円)に達する見通しで、金融機関にとってサービスデリバリーモデルにオフショアリングを組み込むことがいかに緊急の課題であるかが浮き彫りとなっています。
オフショアリングの第1弾はアウトソーシングの要素が強く、多くの金融機関は十分な準備をしないままこれに臨みました。「デュー・ディリジェンス(審査)、実施計画、継続的なベンダー管理が徹底していなかったため、コストが予想以上に高くなったにもかかわらず、望んでいたほどの成果が上がらないケースが目立ちました」とセレントのシニアアナリストで上記レポートの著者であるマイケル・ヘイニーは述べています。また、世論の反応も金融機関側の予想以上に大きなものとなりました。
この結果、企業内オフショアリングやオフショアリングの可能な米国業者へのアウトソーシングを増やすといった新たな戦略が打ち出されています。「将来的に業務の自動化が進めば、今のようなオフショアリングに対するニーズはほとんどなくなると考えられます。したがって、米金融機関の業務変革に真の意味で貢献できるような、革新的オフショアサービスを提供する小規模業者が生き残っていくでしょう」とヘイニーはコメントしています。
このレポートは10の表と17の図を含む全43ページで構成されています。
注)米ドルから日本円への換算レートは、2004年6月30日の仲値(東京三菱銀行公表による)を参照