中国におけるリテールバンキングのビジネス機会と戦略
Abstract
中国の銀行セクターでは、リテールバンキング事業の果たす役割が一段と重要性を増しつつあります。2007年にはリテールバンキングの収入が前年比46.9%増の840億米ドルとなり、銀行の収入全体の33%、利益の27%を占めました。
国民1人当たりの所得や投資チャネルの急速な拡大、決済システムの継続的な改善、銀行・証券分離規制の緩和などの要因は、いずれも中国におけるリテールバンキングの拡大に寄与しています。2007年のリテールバンキング事業の主な収益源は引き続き利息で、収入の74.5%を占めると同時に年間増収率は29.6%となりました。これに対し、手数料ベースの事業は収入全体の25.5%にとどまる一方、年間増収率は138%を記録しています。
セレント最新レポート「中国におけるリテールバンキングのビジネス機会と戦略」は預金及び融資事業の今後のトレンドとして、①人民元建て預金事業は年率10%の成長を維持する②外貨建て預金は減少する③要求払い預金の比率が引き続き上昇する④住宅ローンの伸びは鈍化する⑤クレジットカードローンが急速に拡大し、2010年の融資残高は住宅ローンに次ぐ2,000億米ドルに達する―などの点を挙げています。
手数料ベースの事業のうち2007年の収入が最も大きかったのは代理業務、銀行カード、財務管理、決済などです。今後、銀行が代理業務を拡大していく上で有効なアプローチは①オンラインバンキングの開拓②支店の有効活用③業務地域と範囲の拡大―などであると考えられます。銀行カード事業は急速に拡大していますが、利益率は低くなっています。クレジットカードの利用や顧客による利用額を増やすためには価格、サービス、市場のセグメント化、販売促進などに注力する必要があるでしょう。
「融資事業においては①ブランド力の強調と強化②支店の有効活用③十分な支店網を持たない場合は他行への販売委託やオンラインチャネルの開拓④ウェルスマネジメント商品の拡充⑤テレホンバンキングやオンラインバンキングの開拓⑥従業員の育成―といった戦略を進めるべきでしょう」とセレントのアナリストでレポートを執筆したフア・ジャンは述べています。
本レポートは4表と32図を含む48ページで構成されています。