取得時価格の報告義務化:税金のプロにはビジネスチャンス
Abstract
取得時価格の報告に関する手続きが個人投資家と証券会社で異なっているという問題により、確定申告を請け負う税金のプロにとっては、個人投資家向けビジネスのチャンスが生まれています。その結果、税金のプロの収入は2015年までに4億5,000万ドル(約360億円)近く増える可能性があります。
個人投資家と証券会社で取得時価格の報告手続きが異なることにより、個人投資家が内国歳入庁(IRS)に税金の確定申告をする際に問題が生じています。こうした問題に対応するため、税金のプロが間に入って重要な申告書の作成や助言を行うケースが出てくるとみられます。
IRSへの取得時価格報告が義務化されるのに伴い、業界関係者はこれによって証券会社が抱える問題ばかりに注目し、個人投資家の問題にはほとんど目を向けてきませんでした。新たな用紙(改訂後のスケジュールDやフォーム8949)で報告書を作成すること自体が難しい作業ですが、個人投資家にとっては、証券会社が1099-Bに記載するデータと自らの報告データが一致しないことが問題となっています。
「個人投資家が取得時価格の報告を義務付ける新規制を遵守する上で重要なのは、証券会社が1099-Bに記載した情報が正確かどうかという点です。残念ながら、個人投資家は証券会社が作成した1099-Bの数値と自らが作成したスケジュールDおよびフォーム8949の数値を照合することができません」と、セレント証券グループのアナリストでレポートを共同執筆したアレキサンダー・カマルゴは述べています。
このようなすり合わせができない理由として、証券会社と個人投資家に義務付けられている報告書の内容が異なることが挙げられます。そこに税金のプロが介入するチャンスが生まれ、1099-Bとフォーム8949の数値の違いを調査・照合することで個人投資家をサポートすることが可能になります。
「投資口座を持つ世帯は今や2,500万世帯を超えており、税金のプロにとっては顧客サービスを拡大する絶好のチャンスが広がっているといえるでしょう。彼らは、確定申告書類の作成を助言するサービスを提供することで、取得時価格に関する正確な情報を提供する機会を得られるだけでなく、より深化した顧客関係へと移行することが可能になります。すなわち、顧客の全ての金融資産に関して、CPAと連携しながら包括的で『税効果の高い』戦略を提供できるようになります」と、リサーチディレクターでレポートの共同執筆者であるイザベラ・フォンセカは述べています。
レポートでは、はじめに取得時価格の報告に関する新規制が個人投資家に及ぼす影響を明らかにし、直面する可能性のある課題について論じています。次に、税金のプロが提供している現行サービスの内容を検証し、今後彼らにとってビジネスチャンスが見込まれる市場を特定した上で、そうしたサービスによって得られる収入の上限および下限を予測しています。最後に、取得時価格の報告義務化によって証券会社、投資家および税金のプロが直面する多くの課題の解決に向けてテクノロジーが果たす役割について考察しています。