中小企業向けサービスの拡充に乗り出す 銀行業
Abstract
銀行が中小企業向け顧客サービスの拡充を図る中、実際に同サービスに特化する部門の新設やリテール部門から法人金融部門への再編に踏み切った銀行は全体の約30%に上るとセレントでは見ています。
セレントの最新レポート「中小企業向けサービスの拡充に乗り出す銀行業界」は、これまであまり顧みられず比較的未開拓なまま放置されていた中小企業という顧客セグメントに注力することで、収益拡大を図ろうとする銀行の戦略を検証しています。その中では、銀行による組織再編、ターゲットマーケティングの強化、中小企業特有のニーズを踏まえて設計したブラウザベースソリューションの開発などについて取り上げています。また、ソリューションとそれを提供するITベンダーを主に次の7つの基準に基づいて分析し、ランク付けしています。すなわち、①ソリューション実装の成功例、②銀行業界における実績、③ソリューション特性のレベル、④ベンダーの財務力、⑤ソリューションのカスタマイズ性および柔軟性、⑥顧客サポートのレベル、⑦ソリューションの使い易さ、の7点です。
中小企業の多くが依然として支店を通じた銀行取引を望んでいるとはいえ、銀行側の働きかけやソリューションの進歩によって、オンラインバンキングに転じた中小企業の割合は2001年時点の3.3%から現在では16%に上昇しています。「大手銀行でも同セグメント向け業務の潜在的収益力を認めています。というのも、同セグメントに属する企業が1年間に費やす金融サービス購入総額は約2,700億ドル(約29兆円)にもなるからです。中小企業が取引先銀行の選択時に最重視する要因は優れた顧客サービスの提供であり、こうしたサービスでは認められている小規模銀行に奪われていた中小企業のロイヤルティを、大手銀行が奪還しようとしているのは明らかです」と、セレントのホールセール銀行アナリストで上記レポートの著者であるクリスティン・べリーは述べています。
中小企業向けの新たなバンキングソリューションは、中小企業特有のニーズに加えて、予算規模が限られがちであるという事情も考慮して設計されています。昨年は、ソリューションの有用性を前面に押し出した製品が開発・販売されました。また、ソリューションの機能レベルや目標パッケージ開発能力の高さをアピールする製品も多く出ており、銀行は顧客ニーズの拡大に応じてより高機能なサービスの提供が可能となっています。セレントでは、中小企業向け銀行システムプロバイダーのトップ3を次のようにランク付けしています。
ランキング | ベンダー |
1 | S1 |
2 | Digital Insight |
3 | Politzer & Haney |
出所: セレント・コミュニケーションズ |
このレポートは、5つの図と24の表を含む全57ページで構成されています。
注)米ドルから日本円への換算レートは、2004年10月29日の仲値(東京三菱銀行公表による)を参照。