取引後処理は厳しい時代に:複雑化する環境下で追求する効率性と安定性
Abstract
セレントは継続的に取引後処理に関する調査を行っていますが、今回NASDAQ OMXから依頼を受け調査を実行し、その結果をセレントが独自に取りまとめました。
ここ数年、特に2008年の金融危機の後遺症が残るなか、取引後処理の分野はより大きな関心を集めています。その理由として、市場の安全性と安定性を重視する傾向が強まったことに加え、資産クラスの急増、協調と標準化を求める動き、現代化と効率性向上の重視などが挙げられます。
レポートでは、中央清算機関(CCP)と証券集中保管機関(CSD)に影響を及ぼすグローバル、リージョナル、またローカルな最新トレンドを分析し、主要プレーヤーの取り組みを明らかにしています。
今回、主要市場の中から米国、英国、ドイツ、チェコ共和国、日本、オーストラリア、香港、中国、インド、ブラジル、メキシコ、チリの12市場を対象とし、これら12ヵ国が抱える固有の課題を探り、各地域のトレンドを深く分析しています。
取引後処理に影響を及ぼす要因は規制環境です。金融危機の後遺症が残るなか、規制当局はシステミック・リスクを管理し、市場の安全性・安定性を維持することに注力してきました。そのほか、欧州の決済エンジンTARGET2-Securities(T2S)、決済サイクルの短縮、決済・市場インフラ委員会(CPMI)と証券監督者国際機構(IOSCO)が提唱するFPMIのガイドラインといったインフラに関するプロジェクトも影響を及ぼしています。
「各国の規制当局間で、規制の明確さやすり合わせが欠如しているケースがみられ、一部の規制は同期化や標準化が進んでおらず、規制改正への対応は難しくなっています」と証券プラクティスのアナリストで共著者のアリン・レイは述べています。
規制改正に準拠するため、CCPおよびCSDはテクノロジー投資やソーシング戦略を慎重に検討する必要があります。
「取引後処理サービスを手掛ける大手プロバイダーは、今後もシステム開発における社内開発の比重を増やすものとみられます。しかし、外部システムの利用も広がっています。CCPやCSDが外部システムを採用した場合、より短期間でIT要件を満たすことができ、コストが割安になるケースも多いためです。特に、自社開発に必要なノウハウや資金を持たないティア2およびティア3のプレーヤーにとっては有効な選択肢となっています」とシニア・アナリストのアンシュマン・ジャスワルは指摘しています。
レポートでは世界の取引後処理の組織構造、出資者、商品、サービスを分析し、業界の現状を明らかにした上で、市場プレーヤーが世界および地域レベルで直面している課題を特定し、これらを克服し、規制改正に対応するための計画を紹介しています。
さらに別の項では、市場参加者のテクノロジーへのアプローチとソーシング戦略について説明し、それがどのように進化していくのかを予想しています。最後に、取引後処理業界の将来についてセレントの展望を示しています。
レポートはNasdaqからも入手できます。