欧州における債券電子取引:危機を乗り切る
Abstract
欧州の債券市場はここ数年の間に急成長を遂げ、米市場と並び世界最大の市場となりました。2010-2012年には、経済の回復とスプレッドの縮小に伴い、欧州の総売買高および電子取引は元のレベルへと回復するでしょう。
セレントは最新レポート「欧州の債券電子取引の動向:危機を乗り切る」で、欧州における債券市場の状況を分析し、2000年代初頭に達成したレベルをはるかに下回るまでに落ち込んだ電子取引の深刻な影響について検証しています。レポートはまた、各種インターディーラーブローカー(IDB)およびD2Cプラットフォームについても論じています。
危機を背景に、市場参加者は電子取引への投資に消極的になっていました。が、2008年末に景気は底入れし、2009年に入り回復しつつあります。現在、国債の売買高は、危機前の水準をおよそ20%から30%下回る程度にまで戻っています。国債以外の債券はついては、危機前の水準を70%から80%下回り、いまだ低迷しています。しかし両方ともに回復傾向にあることは確かで、2010年には以前の水準に戻るでしょう。
出典:セレント
「国によって市場開放の速度が異なり、市場の発展にばらつきが見られます。英国とドイツは以前から比較的開かれた市場でした。ここ数年、フランス、ベルギー、オーストリア、オランダなどの国々が、長年MTSに有利であったプライマリー・ディーラー(PD)のプラットフォーム要件を撤廃し、各種IDBプラットフォームも公平な条件で市場に参加できるようになりました。一方、イタリア、スペイン、ギリシャは、国際競争に乗り遅れて入います」とセレントのアナリストでレポートの共同執筆者であるアシュマン・ジャスワルは指摘しています。
また、「欧州の債券のポストトレード・インフラは改革が必要です。現状のままでは、明らかに流動性を阻害する要因となっています。非競争的で分断されており、CCPサービスは電子取引にのみ適用されるだけです。競争を促すことによって、株式市場と同じような発展が期待できるでしょう。株式市場ではMiFID(金融商品市場指令)に基づく行動規範が導入されたことで、ポストトレード処理コストの大幅削減が実現されました。これは、EuroCCPやEMCFなどの真に汎欧州的な清算機関の出現を示唆するものです。こうした進展は、市場参加者、ひいては債券の発行体にとってもプラスとなるものです」とセレントのシニアバイスプレジデントでレポートの共同執筆者のアクセル・ピエロンは語っています。
このレポートは43図と3表を含む59ページで構成されています。