決済データの収益化に対する期待と現実
企業が求めるデータ主導型サービスを特定する
Key research questions
- 銀行は決済データ収益化の機会をどのように捉えているか?
- 法人顧客は何を求めており、何に対して支払う用意があるのか?
- 銀行はどうすればこれを活用できるのか?
Abstract
今こそ、銀行は決済データの収益化に投資すべきである。決済データを活用して法人顧客向けサービスを強化するというコンセプトは十分理解されているが、多くの銀行では、予算面と技術面の課題から導入に向けた進捗は限定的である。
しかし、利益率の低下と企業からの高まる期待の両方に対処する必要に迫られる中、リアルタイム決済とISO 20022メッセージフォーマットの普及を追い風に、この分野への投資が再開されている。こうした動きはここ数カ月間で活発化しており、どの銀行も乗り遅れてはならない。
決済データ収益化の機会の規模を理解するために、セレントは銀行とエンドユーザーである企業を対象に調査を実施した。大手企業217社の財務担当者とCFO (財務責任者) にインタビューを行ったところ、共通するビジネス上の課題や新しいサービスへの需要に加え、サービスの向上に対価を支払う用意があるという極めて重要な事実が明らかになった。一方、銀行の上級幹部168人を対象に行った調査では、これらの増大する顧客ニーズに対応するために銀行が立てている計画について、ユニークな結果が得られた。
これらの調査では、以下の2つの重要な結果が示された。
1つ目は、銀行には何もしないという選択肢はないということ。法人顧客は、多くの付加価値サービスの拡充に対して対価を支払う用意があるが、仮想アカウントやオンボーディングの改善といったいくつかの分野は、衛生要因になりつつある。求めているサービスが提供されなければ、顧客はこれらのサービスを提供できるパートナーに乗り換えてしまうだろう。
つまり、収益成長を支えるために投資することはもちろん重要だが、銀行が既存のビジネスを守るために投資することも同様に重要である。
2つ目は、データの収益化は製品ではないということ。これは製品戦略であり、そのように扱う必要がある。決済データの収益化は戦術的な製品を拡充する1回限りの取り組みであると捉えている銀行は、ROIの達成に苦戦したり、長期的な競争力を高める大きな機会を逃すことになる。最終的な目標は、収益以上のものを得ることである。真の機会は、法人顧客との関係を見直し、サービスを消費してもらうだけの銀行から脱却して顧客の真のパートナーとして行動することにある。