メキシコにおけるリテールバンキングのトレンド:デジタル化とコアビジネスの変化
Abstract
中南米は世界中の金融機関が注目する市場であると同時に、様々な文化や顧客層が混在する地域でもあります。大きなビジネスチャンスが期待できる一方で、一部の国内金融機関が障壁となって市場への新規参入が難しい状況も見られます。
中南米の国々は、高い成長力に加えてテクノロジーの導入にも積極的に取り組んでおり、市場には幅広い可能性が横たわっています。昔ながらの金融サービスをマス富裕層へ提供することで経営を支えていた銀行にとっては、銀行口座を持たない、あるいは銀行から十分なサービスを受けられない多数の消費者をいかに取り込むかが大きな課題でした。しかし、消費者が新たなテクノロジーや製品、サービスを積極的に取り入れ始めたことによって銀行業界のフラット化が進み、これまでの状況が変化しつつあります。テクノロジーの普及により、これまで未開拓の消費者層を低コストで取り込む方法が出現したのです。とはいえ、この市場への参入には時間がかかるでしょう。
本レポートは中南米の様々な市場を考察するシリーズのメキシコ版です。このレポートのシリーズとして、ブラジル版、コロンビア版、チリ版を発行予定です。
メキシコは多数の大手金融機関が密集する巨大市場です。大手金融機関の大半は大手外資系銀行の子会社であり、潤沢な資産を保有していますが、中小銀行の多くは大規模プレーヤーと渡り合うだけのリソースを維持するのに頭を悩ませています。
「中南米でビジネスを展開するにあたってメキシコは戦略上重要な国であり、銀行やベンダーにとっても膨大なビジネスチャンスが存在しています。モバイル機器の普及と顧客層の変化は、この市場が確実に成長することを意味しています。今は銀行口座を持っていない、あるいは口座を持っていても銀行を十分利用していない多数の人々も、将来的には銀行のサービスを利用するようになるでしょう」と、とセレント保険グループのシニアアナリストでレポートを共同執筆したホアン・マツィーニは述べています。
「メキシコでは、デジタルテクノロジーの革新的な活用を実現する、リアルタイム決済のインフラ導入が積極的に進められています。金融サービスのネットワーク化は未だ初期段階ですが、整備が進むにつれて支払う側、受け取る側、政府、銀行、企業を含む金融セクター全体に恩恵をもたらすでしょう」と、レポートの共同執筆者であるセレント・バンキンググループのアナリスト、スティーブン・グリーアは述べています。