リテール・インターネット・バンキング・ベンダーは飛躍の時
Abstract
セレントは、オンライン・バンキングの成長ペースを検証し、このサービスがバンキングサービスの主流となりつつあることがわかりました。この分野の外部ベンダーソリューションへのIT投資は、来年までに5億ドル(約537億円)の大台を超えるでしょう。
インターネット・バンキング向けソリューションは目覚しい技術革新を遂げる一方、導入する顧客数は頭打ち傾向にあるのが現状で、ソリューションプロバイダーは引き続き奮闘を要する立場にあります。ソリューションの特性や機能を巡る競争は続いているものの、ソリューション自体は比較的成熟した段階に来ており、市場は先細りする傾向にあるということです。一方、ソリューションの相互運用性、カスタマイザーション、統合能力などは、ベンダーによる格差が広がっています。セレントはこうした状況を踏まえ、オンライン・バンキング・ソリューションを巡る技術の進展状況や顧客サービスの充実度に渡って詳しく分析しました。
セレントの銀行プラクティスのマネージャーで今回のレポートの共著者であるアレンカ・グリリッシュは、次のように述べています。「インターネット・バンキング・ベンダーは、ここ10年間、投資利益率(ROI)の大幅な向上をもたらすソリューションの開発に注力してきました。市場の低迷にもかかわらず、ROIの上昇に向けた機能強化の手を緩めることはなかったのです。現在の課題は、こうした機能の強化が利益改善に結びつくことを顧客である銀行にアピールすることです。」
また、もう一人の共著者でシニアアナリストのダン・シャットは、こう述べています。「これまで銀行は、顧客個人の財務管理に関しては顧客自身が「Quicken」や「Microsoft Money」などの個人財務管理ツールで対処するのにまかせ、そのために必要なデータをOFXファイルでダウンロードできる機能を整備するためかなりの資金を投じてきました。ここにきて銀行は、ビルペイメントやオンライン・バンキングの一環として支出管理、資金移動、アグリゲーションなどのサービスに乗り出し、顧客の利便性向上に努めています。今年は、基幹システムやその他アプリケーションベンダーがこうした機能を充実させた製品を、今までにないほど投入すると思われます。銀行にとってはこれを活用する好機です。」
本レポートではベンダー9社の製品を検証し、セレント独自のベンダー評価基準「ABCDベンダービュー」を提示しています。この評価基準とは、
A. advanced technology(技術の先進性)、B. breadth of end-user features(エンドユーザー機能の幅)、C. customer base(顧客基盤)、D. depth of client services(顧客サービスの充実度)です。なお、対象となったベンダーはCorillian、Digital Insight、Fidelity Information Services、Financial Fusion、Fiserv、Metavante、Online Resources、Open Solutions、S1の9社です。このうちCorillianは4つの基準すべてでトップとなる突出した存在で、これをDigital InsightとFinancial Fusionが追っています。S1は今年、機能面の欠落を補う予定です。これら4社は、技術・機能で優れた実績を持つほか、顧客からはニーズに適格に対応するベンダーとして、一貫して挙げられています。
注)米ドルから日本円への換算レートは、2005年3月31日の仲値(東京三菱銀行公表による)を参照。