個人投資家による債券オンライン取引の発展性
Abstract
セレントは、向こう数年間に個人投資家による債券オンライン取引が徐々に拡大すると予想しています。2007年末には米国における個人の債券取引の約13%をオンライン取引が占めるとみています。
米国の個人向け金融サービス業界において債券市場は長年株式市場の陰に押しやられてきましたが、ここにきてその存在感が急速に高まっています。セレントの最新レポートは、個人向け債券市場の現状を明らかにするとともに、米国内のリテール向け大手債券引受業者にも焦点を当てています。また、チャールズ・シュワブとハリスディレクトに関するケーススタディも掲載しています。
これまで、債券は機関投資家向けの金融商品であるというのが一般的な見方でした。債券投資を行うのは主に年金基金、投資信託、保険会社、政府機関などの機関投資家でした。しかし、本レポートの共著者であるアダム・ジョセフソンによると、「個人投資家向けの債券教育が行き届き、個人を対象とするオンライン取引の基盤が整ったことで、債券商品をポートフォリオに加える個人投資家が着実に増えています。」
米国における個人の債券保有額は1997年には2兆ドルをわずかに上回る程度でしたが、2002年末には3兆ドルを大幅に超える水準となり、年間平均9%のペースで増加しています。ただし、個人による保有額の増加は必ずしも個人のオンライン取引の増加に結びつく訳ではありません。同レポート共著者のサン・リーは次のように指摘しています。「個人投資家が債券購入後にこれを長期間保有するという現在の市場環境が、活発な売買取引が行われる市場へと一夜にして変わるようなことはあり得ないでしょう。むしろ、流動性が欠けていた市場に少しずつ流動性が生じていくという、進化の過程をたどるものと思われます。」
個人による債券取引が活発になれば、価格透明性の向上や取引コストの低下が進むと考えられます。その結果、近い将来には多様な債券商品を取引する個人投資家とりわけオンライン取引の利用者の数が増えるでしょう。しかし、当面は個人の債券投資促進の担い手とされるリテールブローカーの債券持ち高を増やすことが先決で、そのために大手債券引受業者の果たす役割が重要といえるでしょう。