欧州オルタナティブ投資市場の概要 パートⅠ:ヘッジファンドと不動産ファンド
Abstract
ヘッジファンド市場への新たな投資家による資金の過剰流入が続く中、セレントでは、2005年から2006年にかけてファンドの閉鎖が増加するものと予測しています。
現在、オルタナティブ投資ファンドの人気が過熱しています。低迷する市場の中で平均を上回る投資リターンを追及する投資家の動きを反映して、2004年、2005年とヘッジファンドや不動産ファンドへの資金流入が加速しています。ヘッジファンド運用においては米国が世界のリーダー的存在ですが、目下最大のプレーヤーは欧州諸国です。世界のヘッジファンドの運用資産総額は1兆米ドル(約112兆円)を超えていますが、このうち欧州は2億3,000万米ドル(約260億円)以上を占めています。また、不動産投資については、欧州市場の方が米国市場よりも定着しており、運用資産額は3億4,000万米ドル(約380億円)に上ります。
セレントは最新レポート「欧州オルタナティブ投資市場の概要―パートⅠ:ヘッジファンドと不動産ファンド」において、同市場の主要トレンドの概要と分析を提示し、有力な市場プレーヤーを明らかにするとともに、将来の成長見通しを示しています。オルタナティブ投資がこのような人気投資商品になった要因は、平均を上回るリスク調整後リターンの実現にありますが、レポートでは多くのファンドの持続的な高リターン確保を困難にさせる要因について考察し、そして、ファンドの運用資産クラス別に懸念要因を分析しています。
「ヘッジファンドの運用資産総額は今後も増加基調が続くと見られますが、同じような投資戦略を持つファンドに資金が集中しすぎることから、今年から来年にかけてリターンは低迷するでしょう」とセレントの証券プラクティスのシニアアナリストでこのレポートを執筆したローレン・ベンダーは述べています。「私達は急速に中型ファンドの数が減少するだろうと見ています。というのは、新規資金の大半が引き続き既存の大型ファンドに流入する一方、小型で機動的な新規参入ファンドが業界に先駆けた新しい投資戦略を展開すると見るからです。」
セレントの見解では、オルタナティブ投資ファンド間の区別は次第にあいまいとなり、市場が発展するにつれて、最終的には一つのファンド内で複数の投資戦略を自由に追及する大型の「オルタナティブ投資」ファンドに収斂するものと思われます。
レポートには、欧州最大規模のヘッジファンド、ファンド・オブ・ヘッジ・ファンズ、不動産ファンド夫々の運用マネージャーのリストを掲載しています。対象とした主な市場は、英国、スイス、フランス、ドイツ、オランダです。
このレポートは欧州オルタナティブ投資市場に関する2部シリーズの第一弾で、欧州のヘッジファンド、ファンド・オブ・ヘッジ・ファンド、不動産ファンドに焦点を当てています。第二弾ではプライベート・エクイティ・ファンド、ベンチャー・キャピタル・ファンドについて取り上げる予定です。
レポートは15図と4表を含む全36ページで構成されています。
注)米ドルから日本円への換算レートは、2005年7月29日の仲値(東京三菱銀行公表による)を参照。