学生ローンの返済猶予の終了と債務危機
2023/11/09
貸付金回収のデジタル化と顧客エンゲージメントテクノロジーが不可欠な理由
Abstract
米国ではパンデミックの間に多くの政策変更、法律の制定、連邦準備制度理事会 (FRB) の金融政策が行われたが、今のところ、ローンの返済猶予措置は成功した政策と言える。住宅ローンは延滞率が急上昇することもなく、ほとんどの借り手が予定どおりに返済を再開している。ただし、金利の低下と景気回復が住宅資産価値の押し上げに寄与し、住宅ローンの深刻な滞納に陥った人は返済をする余裕がなければ家を売却することができるということも背景にはある。
一方、連邦学生ローンの場合は、借り手を取り巻く経済環境が大きく異なっている。2023年8月末で返済猶予措置が終了し、9月1日からローンの利息が発生して10月1日からは返済が再開された。しかし、貸し手の信用リスクに関しては、学生ローンでは借り手が債務不履行に陥った場合、それを保証する担保が設定されておらず、そもそも借り手の多くは住宅ローンの借り手よりも経済的に弱く、保有する資産も少ない。また、貸し手が連邦政府ではない民間の学生ローンはこの措置の対象ではない点に注意することも重要である。ただし、民間の貸し手が個別に借り手の返済を猶予する場合もある。
では、学生ローンの返済猶予措置が終了することで、金融機関はどのような影響を受けるのか?学生ローンの返済猶予措置終了の影響は、既存の顧客との関係維持に努めている金融機関にとって世代を超えた課題となる。