2023年 ウェルスマネジメントにおけるITの戦略と優先事項
Abstract
ウェルスマネジメントのIT支出に関するリサーチレポートを作成するにあたり、セレントは世界の全主要地域 (北米、欧州、アジア太平洋、中東・アフリカ、中央・ラテンアメリカ) の企業の幹部215名を対象に調査を行った。。
世界各国の回答者から収集されたデータは、トレンドや指標に関するセレントのインサイトの基盤となるものである。本レポートシリーズでは、現在および予測されるITの優先事項と戦略、エマージングテクノロジー (AI、クラウド、メタバース、量子コンピューティング) に関するIT支出の優先順位、プラットフォームやエコシステム (フロントからバックオフィスまで) 全般におけるIT支出の内訳について紹介する。また、地域別のIT支出についても分析している。
本レポートは、ウェルスマネジメントのIT支出に関するレポートシリーズの第1弾であり、ウェルスマネジメント業界のIT支出に関する最も包括的な概要の1つになるだろう。
大まかに言うと、マクロ経済環境や地政学的環境によって困難な状況が生じているにもかかわらず、2023年のウェルスマネジメントのIT支出は確実に増加していることが分かった。背景にある主な要因は各地域や金融機関によって異なっているが、顕著なテーマとして、コンプライアンスの維持、および金融機関内のスピードとアジリティの向上がある。また、特に、カスタマイズされた投資ソリューションの提供に関連して、商品とプラットフォームのイノベーションに重点を置いていることも大きく関係している。さらに、回答者の40%が最も優先度の高い商品のイノベーションプロジェクトとして「オルタナティブ投資などの非伝統的な投資商品の統合」を挙げ、僅差で「ESG」を上回った。
特に注目に値するのは、アジリティに重点が置かれていることである。背景には多くの要因があるが、最も根本的な要因の1つは、フィンテック業界の成長によって起きたカルチャーの変化である。このところ、迅速性と機敏性を高めるという方針を公言するウェルスマネジャーが増えており、こうしたマネジャーはアプローチを適応させる必要があると認識している。クラウドの導入ペースの速さ、AI関連の活動の急増、投資商品とプラットフォームのイノベーションプロジェクトへの注目の高さはすべて、ウェルスマネジャーの意識が大きく変化していることの現れである。