インテリジェンスの強化によるトレジャリーインサイトの提供
2022年10月に、私は企業の財務担当者がキャッシュと流動性を管理することの重要性に関するレポート「すべてキャッシュ関連のトピック:AFP2022からの考察」を発表した。これを受け、銀行は財務担当者にインサイトと推奨事項を提示するツールの提供を増やしている。
私は、AIやインタラクティブなユーザーエクスペリエンスと同様に、トランザクションデータもまだ成長のために十分に活用されていない資産であると確信している。トレジャリー・クライアントにとっての情報レポーティングとそれに関連するデータの価値に疑いの余地はないが、銀行からはトランザクション・バンキング商品の中で最も地味な商品の1つと見なされがちである。情報レポーティング向けの商品はそれほど人気がなく、より刺激的な商品のイノベーションの影で長年放置されてきた。しかし、顧客レポーティングと照合ソリューションの基盤となるトランザクションデータは、トレジャリー・インサイトやアドバイザリー・ソリューションに活用することができる(そして、活用すべきである)。
いくつかの銀行は、法人顧客が将来の現預金残高をより正確に予測するのを支援するために、AI(人工知能)やML(機械学習)を用いたキャッシュフロー予測ソリューションをすでに導入している。「キャッシュマネジメントの画期的なイノベーション:先駆的銀行とポイントソリューションパートナーによるキャッシュの可視性/予測に関する取り組み」(2021年12月)。しかし問題は、銀行がよりインテリジェントな財務ソリューションを構築する手段として、予測ソリューションの導入を進めているのか、それとも予測ソリューションの導入自体が目的なのかということである。
「トレジャリーインサイトを引き出す」では、トランザクションバンキング部門がレポーティングデータの構成要素に基づき、また意思決定をサポートするための拡張インテリジェンスを大幅に活用し、顧客向けのセルフサービスのアドバイザリーツールと顧客向けインサイトのロードマップを作成する方法について考察している。これは、自動車の運転支援と同様に、データサイエンスと人間の相互作用を組み合わせることで学習を可能にし、意思決定を強化するアプローチである。
より高度なアプリケーションやエクスペリエンスを大規模に提供するために必要となるデータ、常時接続(APIベース)サービス、およびAI技術やツールの採用においては、それぞれの機能の進歩が必要である。ただし、これらの新しい機能にはさまざまなレベルの「インテリジェンス」があり、すべてが高度なAIを必要とするわけではないことに留意すべきである。従来のレポーティングと照合のソリューションから、拡張インテリジェンスを経て、財務のインテリジェントな自動化が実現する。
未来の財務エクスペリエンスを提供するうえで、「拡張インテリジェンス」を採用することが今日の現実的な戦略である。