キャピタルマーケットにおけるクラウド・コンピューティング
Abstract
(このレポートは2012年9月27日に"Cloud Computing in Capital Markets"というタイトルで英文で発表されましたが、和訳版を2012年12月27日に発行しました。)
資本市場では、クラウド・コンピューティングに対する旺盛なニーズが続いています。クラウド導入によって、ITコストの削減、拡張可能なコンピュータ容量の確保、余剰リソースによる新テクノロジーや利益創出プロジェクトのサポートといった効果が期待されています。セレントは、世界の資本市場におけるクラウド・コンピューティング関連の投資額は2012年の予想額は23億ドル(約1800億円)、2013年には28億ドル(約2200億円)に拡大すると予測しています。
最新レポート「キャピタルマーケットにおけるクラウド・コンピューティング」は、現在利用可能なクラウドの選択肢と普及を促進する要因、業務およびIT上の課題について解説し、最後にクラウド・コンピューティングの選定におけるアドバイスを示しています。
金融機関は、演算およびデータ保存容量の山と谷の両方に対応する必要があるため、拡張可能な容量の確保が不可欠となっています。最大容量は、取引量や景気動向に影響するイベントによって左右されます。また、容量使用率が低くなれば、未使用部分のコスト抑制が求められます。金融機関は今後、ポートフォリオの分析および過去データに基づく検証など、拡張可能な演算能力が求められる従量制モデルやサポートプロジェクトへの投資に軸足を移すとみられ、容量の柔軟性を求める傾向はさらに強まるでしょう。
普及促進要因 |
導入効果 | |
コストが抑制されるほど、利益が拡大 |
金融機関のITコストは大きく膨らむ可能性があるが、クラウドの導入によってコスト削減と利益率の向上が可能になる。 |
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実装期間の短縮 |
既存のサービスプロバイダーのシステム容量を利用するため、短期間での実装が可能になる。 |
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IT投資と設備投資の削減 |
容量使用率の向上により余剰容量の削減が可能になり、ITコストと設備投資の低減につながる。 | |
柔軟性が向上し、容量の急拡大が可能 |
クラウドの導入により、IT部門は演算ニーズの山と谷に合わせて容量を管理できる。 |
「キャピタルマーケットは、クラウド・コンピューティングに対する様々なニーズの掘り起こしが見込まれる分野です。金融機関の間では投資や業務分析にビッグデータを活用する動きが広がっており、今年から来年にかけて、クラウド・コンピューティングの大容量を生かしたビッグデータプロジェクトが活発化するとみられます」と、セレント証券グループのシニアアナリストでレポートの共同執筆者であるビル・ファーンレイJr.は述べています。
レポートでは、キャピタルマーケットにおけるクラウド・コンピューティングのニーズを明らかにし、現在利用可能なサービスモデルを紹介しています。具体的には、SaaS(サービス型ソフトウェア)、PaaS(プラットフォームサービス)、IaaS(インフラサービス)などです。また、資本市場にクラウドを導入する際に検討すべきテクノロジー項目を挙げ、パブリック・クラウド、プライベート・クラウド、ハイブリッド・クラウド、インダストリー・クラウドといったIaaSの実装モデルを分析しています。
注)ドルから日本円への換算レートは、2012年8月31日の仲値(三菱東京UFJ銀行公表による)を参照。