スワップ執行ファシリティ:機関投資家市場におけるビジネスチャンス
Abstract
(このレポートは2011年3月22日に"Swap Execution Facilities: Opportunities in the Institutional Marketplace"というタイトルで英文で発表されましたが、和訳版を2012年10月23日に発行しました。)
スワップ執行ファシリティ(SEF)は現時点でなお検討段階にありますが、概ね現実のものとなりつつあります。ドッド・フランク法(Title VII)は、2012年末あるいは2013年初めまでにスワップ取引を電子清算機関で執行することを義務付けています。SEFの設置は、スワップ市場の構造改革を促す決定的な要素となるでしょう。スワップ取引はこれまで標準化されることなく相対ベースで行われてきましたが、これを機に標準化が進み、中央清算機関を通じた電子取引に移行する見通しです。
セレントの最新レポート「スワップ執行ファシリティ:機関投資家市場におけるビジネスチャンス」はSEFとして認められるために必要な基盤について考察し、SEFの進化の状況や設立に向けたロードマップを明らかにしています。また、SEFの今後のライフサイクルをを予測し、また、SEFの機能を担うマルチディーラー・プラットフォームやSEFと取引を行うディーラーにとってのビジネスチャンスや課題についても説明しています。
SEFの定義を満たし、実際にSEFとして業務を行うためには、まず登録を行った上でプラットフォームの接続性や清算機能を強化する必要があります。また、規制の施行時期と登録時期に合わせて開発を行わなければならず、SEFの定義を満たすためには順序付けの問題もクリアしなければなりません。 さらに、優先順位を明記した開発のロードマップには、システム統合だけでなくイノベーションも盛り込む必要があります。
一方、SEFのイノベーションが業界で広く採用されるとは限らないでしょう。 SEFが開発している最も革新的なシステムでも、バイサイドとセルサイドの大手金融機関の関心や流動性を捉えきれていません。これは簡単に実現できるものではなく、単に新しい取引プロトコルを提供するだけでは不十分です。取引プロトコルが成功するか否かは、市場参加者の流動性需要によって決まってくるからです。
「SEFの定義を満たすことは重要ですが、単なる通過儀礼にすぎず、それによって成功が保証されるわけではありません。その先の道のりは平坦ではなく、膨大なリソースを継続的に投入していく必要があるでしょう」と、セレント証券グループのリサーチディレクターでレポートを執筆したデビット・イーストホープは述べています。