オンライン証券市場の最新動向:自立志向型投資家の拡大
Abstract
米国オンライン証券の自立志向型投資家市場に関する調査の結果から、取引活動、中核機能と差別化要因、証券取引システムをめぐる主なトレンドと動きを明らかにします。
金融危機後、米国では自立志向型投資家による証券取引市場が進化を続けています。金融業界の内外でデジタル化が進む中で、ウェルスマネジメント業界は、世代間資産移転、当局による規制強化、高度なマルチチャネルサービスに対するニーズ拡大、透明性の向上、顧客サービスの質の向上といった課題に直面しています。
「ここ数年は予測の難しい、厳しい景気環境が続いてきたにもかかわらず、米国の自立志向型投資家市場は2014年に緩やかな成長を遂げました」とセレントのウェルスマネジメントプラクティスでリサーチ・ディレクターを務め、今回のレポートを共同執筆したイザベラ・フォンセカは述べています。
「2009年以降、米国の主要な株式関連指数が改善傾向にある一方、この間にS&P指数のボラティリティ―は低下し続けており、投資家の市場に対する懸念および不透明感が全体として弱まったことがうかがえます。また、DARTs(収益を伴う約定もしくは取引の1日当たり件数)の増加や、主要証券会社で顧客の取引口座数が増えていることもこれを裏付けています」と、ウェルスマネジメントプラクティスのアナリストでレポートの共著者であるアシュレイ・グロバーマンは指摘しています。
オンライン証券会社が資産クラス、顧客教育ツール、マルチチャネルにおける取引プラットフォームの機能といった商品・サービスを拡充していることを受け、自立志向の投資家が増え続けています。
「平均的な自立志向型の個人投資家の割合が拡大し、個人投資家がより合理的で顧客主導のサービスを求めるなか、証券会社が個人顧客を取り込むためには、自社の中核機能に磨きをかけ、付随的なサービスも提供することが不可欠です」とシニアアナリストでレポートの共著者であるウィリアム・トラウトは述べています。
今回の調査では、以下の点が明らかになりました。
- 規制強化の動き、顧客の期待、テクノロジーの進化がウェルスマネジメントおよびオンライン証券業界の変化を促している。
- 市場および証券業界では、業績回復と成長の機運が広がっている。顧客のDARTs(モバイルによるものを含む)と証券口座の件数はいずれも堅調な伸びを見せている。
- 米国のオンライン証券市場は細分化が進み、取引プラットフォームが増加しているほか、新規参入も続いている。
- 自立志向の投資家の数は、それ以外の投資家を上回るペースで増加している。証券会社が個人投資家向けに無料で高度な教育リソースを提供するなか、自立志向型個人投資家の割合は拡大中である。証券会社は、ソーシャルメディアやモバイルチャネルを戦略計画の最前線に位置づけている。
- オンライン証券サービスの提供を検討している金融機関には、外部のベンダーと提携するか、社内でオンライン機能を開発するかの選択肢がある。クリアリングハウスはワンストップサービスを提供することで、既存の取引システムプロバイダーに攻勢をかけている。
レポートではまず、自立志向型投資家の市場セグメントを明らかにした上で、米国の証券会社を顧客セグメントごとに分類し、オンライン証券会社がどこに位置付けているか示します。今回の調査結果からは市場の発展状況やトレンド、市場の主要プレーヤーとその中核機能、差別化要因、顧客タイプ、チャネルなどが明らかになりました。調査ではプラットフォームの開発状況にも焦点を当て、証券会社が選択可能なテクノロジーを示し、真に「コストフリー」かどうか評価しました。レポートの結論では、オンライン証券業界の今後の展望、様々なカテゴリーの個人投資家の成長性、オンライン証券会社が市場で差別化を図るためは何をすべきかについて論じています。