市場監視システム:リスク軽減のための必需品
Abstract
資本市場の取引プラットフォームにおいて、市場監視システムは不可欠な要素となっています。規制当局、取引所、セルサイドおよびバイサイドの金融機関は同システムの導入によって業務を円滑化できる一方、不正または違法取引を区別し、それらに対処することが可能になります。
KEY RESEARCH QUESTIONS | |
1 | 世界的な市場監視システムの普及拡大はどのような動きに表れているか? |
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この分野における最近のトレンドは? |
3 | 市場監視システムの利用拡大における規制当局の役割はどのようであったか? |
本レポートは、市場監視システムをめぐる最近の業界トレンドに焦点を当てています。ドッド・フランク法、金融商品市場指令(MiFID)Ⅱ、市場濫用指令などの規制は、市場監視を担う業界の拡大と発展を促進する役割を果たしてきました。ここにきてフラッシュクラッシュに対する捜査が行われたことや、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)での売買をめぐって英国籍の独立系トレーダーが逮捕されたことなどを受け、取引の参加者はもちろんのこと、取引所や規制当局の市場監視ニーズにも注目が集まっています。そのため、監視システムの利用目的は規制要件を満たすためだけでなく、市場濫用の防止を徹底するためでもあります。
LIBORの不正操作問題は、最高経営幹部およびコンプライアンス部門が社内の取引慣行に関する責任をどれほど厳密に果たしているかを示す格好の事例といえるでしょう。この件は市場参加者の側の注意を呼び覚ます必要があることを示すとともに、望ましくない取引行為が発生した場合、さらには組織が大規模であるために十分な監視ができないケースなどでどの程度の法的責任が問われるかを明らかにしています。
最も高度な監視システムを導入しているのは、グローバルに事業展開する主要取引所やセルサイドの金融機関です。ただ、規制当局やバイサイドの金融機関などその他の市場参加者の間でも、こうしたシステムへの投資を通じて必要な監視を強化する動きが広がっています。
取引参加者の中でもトレンドをリードする役割を担うケースが多い大手投資銀行は、リスクに基づく市場監視のアプローチへと移行しています。ベンダーは、既存製品を大幅に強化してそのニーズに応えることを求められてきました。これは、ベンダーが規制強化の動きを予測し、それに先駆けて対策を講じてきたことを示しています。また彼らは、コンプライアンス要件の変化にオンデマンドでアクセスできるよう、常に世界の法令・規則集の動きを徹底的に把握しています。この結果、顧客である金融機関は、世界中の主要な国および地域で規制およびコンプライアンス関連データを大量に処理できる体制を整えることができるのです。
「市場監査の分野は、ここ数年で大きく成長しています。これには、金融危機の影響とベンチマークの不正操作問題から学んだ教訓、規制強化、監視に利用可能なテクノロジーの急速な進化など複数の要因が寄与したといえるでしょう」とセレント証券グループのシニアアナリストでレポートを執筆したアンシュマン・ジャスワルは述べています。