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アジアのウェルスマネジメント市場:回復への道筋

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2011/03/29

Abstract


(このレポートは2010年10月20日に”Wealth Management in Asia: The Road to Recovery”というタイトルで英文で発表されましたが、日本語版を2011年3月29日に発行しました。)

景気の拡大を背景に、アジアの総人口および富裕層人口は大幅に増加しています。アジアでは富裕層の人口が世界で最も急速に増加しており、今後2年間の増加率は年率15〜20%に達すると予測されています。

セレントの最新レポート「アジアのウェルスマネジメント市場:回復への道筋」は、中国、香港、インド、日本およびシンガポールの5ヵ国におけるウェルスマネジメント市場の最新動向を分析しています。欧米市場が世界的な金融危機の後遺症からいまだ抜け出せていないのに対し、アジア市場は、8〜10%の目覚ましい成長率を記録している中国やインドが牽引役となり、世界の先頭に立つ成長ぶりを見せています。

アジアにおけるウェルスマネジメントの事業環境はここ2年間決して良好とはいえませんでしたが、各国政府による景気対策の大幅な転換が奏功し、景況感は改善しています。こうした回復基調は2010年になっても続いており、富裕層にとっては近い将来の明るい兆しといえるでしょう。セレントは、上記5ヵ国のウェルスマネジメント市場は今後2年間に年率15%を超えるペースで拡大するとみています。

富裕層顧客が徐々に市場への信頼感を取り戻してきたとはいえ、投資家は、景気後退が始まった時点からとり続けてきた慎重かつ保守的なスタンスを変えておらず、預金や債券といった低リスク商品が依然として選好されていますが、市況の回復を追い風に株式投資も少しずつ復調しつつあります。同時に、投資家は割安な証券に目を光らせているようです。

出典:セレント

金融危機では、ウェルスマネジャーの運用パフォーマンスの低迷、投資先の誤り、顧客に応じたソリューションの欠如といった問題が浮き彫りになりました。ウェルスマネジメントサービスを提供する金融機関の多くが顧客を失う結果となり、顧客ロイヤルティの獲得と顧客のつなぎとめが重要な課題となっています。投資家はポートフォリオ管理に積極的に関わる姿勢を強めているものの、金融危機がもたらす影響は未知数であるため、ウェルスマネジャーのアドバイスへのニーズは高まっています。金融機関は透明性、リスク管理、個別アドバイス、報酬体系、クロスセリング、顧客教育や報告書作成に加え、顧客基盤の多様化にも一層注力しています。

規制環境も変わりつつあり、規制改正がウェルスマネジメント業界に直接または間接的な影響を及ぼすケースが多くなっています。リスク管理の改善、自己資本比率の引き上げ、透明性、投資家保護、顧客の本人確認基準といった重要分野は、規制当局による直接の監督下に置かれるようになりました。コンプライアンス関連費用は上昇傾向にあり、短中期的にこうした傾向は続くでしょう。

ウェルスマネジメントを手掛ける金融機関は、変化を続ける規制環境や市場の実情に適応していかなければなりません。「コスト削減、リスク管理、効率性の向上、顧客サービスの改善を実現するためには、システム導入も1つの手段となるでしょう。アジアのウェルスマネジメント業界におけるIT投資額は、世界の水準を下回っています。アジアの金融機関は、一部のグローバルプレーヤーを除き、これまでテクノロジーをあまり重視してきませんでしたが、システムの導入は長期的にみてコスト削減につながるはずです」と、セレントのインド金融サービスグループのアナリストでレポートを執筆したアリン・レイは述べています。

アジアのウェルスマネジメント業界では、IT予算の抑制に伴い目先のシステム投資は低迷するとみられるものの、最終的には世界に並ぶ水準まで最新システムの導入が進むでしょう。主導権を握るのはグローバルプレーヤーで、国内プレーヤーが競争力を維持するためにはこれらに追随しなければなりません。

レポートでは、各市場の背景にあるマクロ経済環境を詳しく分析し、市場動向とビジネス機会、規制の動向に焦点を当てています。また、アジアのウェルスマネジメント業界の今後の見通しに関するセレントの見解を示しています。

このレポートは17図と2表を含む40ページで構成されています。