アジア太平洋地域のシンセティックETF
A Losing Battle?
Abstract
アジア太平洋地域のシンセティックETF市場は米国のものと比較して小規模です。シンセティックETFがETF市場に占める割合は、欧州では37%、アジア太平洋地域では約11%となっています。しかし、米国には規制による制限や市場の発展度合いに差が存在することから、ETF市場全体にシンセティックETFが占める割合は約3%にとどまっています。
セレントの最新レポート「アジア太平洋地域のシンセティックETF」では、アジアのETF市場の進化について述べています。アジアではいくつかの理由から、取引所で取引されたファンド、とりわけシンセティックETFの売上高が伸びています。第1の理由としては、こうしたファンドを通じて、アクセスが困難な市場や流動性のない市場への投資が容易になることが挙げられます。第2に、シンセティックETFは現物ETFに比べて管理や投資にさほどコストがかかりません。以上のことから、香港、シンガポール、日本などのアジア主要市場では、シンセティックETFが重要な役割を持つと思われます。
アジア太平洋地域では、取引所取引商品(取引所取引ファンドや取引所取引コモディティなど)に組み込まれた資産が2003年以降、毎年(世界全体が金融危機に見舞われた2008年は除く)増加してきました。アジア市場には大きな成長の可能性が潜在しています。
「香港とシンガポールはアジアのシンセティックETF市場をリードしてきました」と、セレントのシニアアナリストで今回のレポートの執筆者であるアンシュマン・ジャスワルは述べています。「しかしながら、香港では規制当局の介入、シンガポールでは新たなルール導入の可能性があり、アジア市場が今後も同様のペースで成長するにはかなりの努力が必要になるでしょう」
このレポートでは、シンセティックETFに焦点を当てながら、ETF市場の概観をまとめました。米国や欧州といった先導市場における規制の枠組みにも触れています。さらに、アジアにおけるシンセティックETFの発展や、規制によってもたらされた最近の市場の方向性について述べ、シンセティックETFへの投資を阻害する主要な問題を考察しました。